ユーザーアンケートの作り方:フィードバックを改善に活かす方法

はじめに

ITサービスデスクは、ユーザーとの接点が多い部署であるがゆえに、サービスレベルや対応品質の評価を“直接”受けやすい立場にあります。その評価は、単に「ありがとう」「困った」といった口頭の感想にとどまらず、きちんとアンケート調査という形で定量・定性の両面から収集することで、サービス全体の改善に活かすことが可能です。

しかし、アンケートを実施すると決めた際、「設問が多すぎる」「質問内容が漠然としている」などの理由で、ユーザーの回答率が下がってしまうケースも珍しくありません。そこで本記事では、「ユーザーアンケートをどのように設計し、運用すれば、効果的にフィードバックを得られるのか」をテーマに、具体的な方法論やヒントを提供します。ITサービスデスクに限らず、社内外のユーザーアンケート活用を考えている方にも参考となる内容です。


1. なぜユーザーアンケートが必要か

1-1. 客観的な指標を得るため

サービスデスクの改善を進める際、「現在の対応品質は良いのか悪いのか」「どの部分にユーザーが不満を感じているのか」といったデータがなければ、正確な課題把握は困難です。スタッフ個人の主観や、特定のユーザーの声だけに頼ると、全体像が歪む恐れがあります。アンケート調査を行うことで、より客観的で幅広い視点のフィードバックを得ることができます。

1-2. 改善優先度の判断材料

ユーザーに聞いてみると、「一次対応のスピードは満足だが、エスカレーション時の情報共有が不足している」など、具体的な要望が浮かび上がることがあります。これを踏まえて改善施策を立案すれば、限られたリソースを本当に必要な部分に集中投入できるでしょう。アンケート結果は、改善優先度を決定する際の強力な根拠となります。

1-3. ユーザーとのコミュニケーション促進

アンケートを通じて「私たちはあなたの意見を大切にしています」というメッセージを送ることは、ユーザーとの関係構築にも役立ちます。回答内容を踏まえた改善策を実行し、その成果をフィードバックすることで、ユーザーは「声を届ける意味がある」と感じ、協力的になってくれる可能性が高まります。


2. アンケート設計のポイント

2-1. 目的を明確にする

まず重要なのは、「何のためにアンケートを取るのか」をはっきりさせることです。例えば、以下のように目的を定義すると良いでしょう。

  • 目的1: 日常的な対応の満足度を測り、改善点を探る
  • 目的2: 新サービス(セルフサービスポータルやチャットボットなど)の利用状況や課題を把握する
  • 目的3: 新人スタッフの対応品質に対する評価を収集する

目的があいまいだと質問項目が散漫になり、回答者に余計な負担をかけてしまいます。

2-2. 設問数を絞り込む

アンケートは短いほど回答率が上がる傾向にあります。あれもこれも聞きたい気持ちは分かりますが、必要最低限の質問に絞り、5〜10問程度に収めるのがおすすめです。どうしても詳細を知りたい場合は、任意回答の自由記述欄を設け、そこに深掘り質問を配置するなど、回答者の負担を軽減する工夫をしましょう。

2-3. 回答形式を工夫する

「はい/いいえ」や「5段階評価」といった定量的な設問は集計しやすく、比較や変化の測定にも向いています。一方で、ユーザーの生の声を知るには自由記述欄が有効です。両者をバランスよく組み合わせると良いでしょう。ただし自由記述欄を多く設けすぎると回答に時間がかかり離脱されやすいので、最小限に留めるのがポイントです。

2-4. 言葉遣いを分かりやすく

専門用語が多いと、ユーザーが「質問の意図が分からない」と感じて回答を放棄してしまう恐れがあります。また、社内向けアンケートであっても部署や職種によって使う用語が異なるため、なるべく平易な表現を使い、例示を加えるなどして誤解を減らすことが大切です。


3. アンケートのタイミングと実施方法

3-1. チケットクローズ直後のミニアンケート

問い合わせ対応が完了したタイミングが、もっとも生の感想を得やすい時期です。サポートメールの末尾に「この対応はいかがでしたか?」「5段階で評価してください」といった超短文アンケートを設置する手法は、多くの企業が採用しています。回答するハードルが低いため、日常的にユーザー満足度をトラッキングできるメリットがあります。

3-2. 定期的な満足度調査

半年に一度や年に一度の頻度で、全ユーザー(または特定部署・顧客)を対象に「サービスデスク全体の満足度」や「改善してほしい点」を問うアンケートを行う方法です。短期的な感想ではなく、総合的・中長期的な評価を得たい場合に有効です。回答率が下がりやすいので、協力してくれたユーザーに対してちょっとした特典(例:抽選で景品など)を用意するケースもあります。

3-3. フィードバックフォームやポータル

セルフサービスポータルや社内サイトに「サービスデスクへのフィードバックフォーム」を常設しておく手もあります。いつでも意見を届けられるという安心感を与えられますが、特定の時期に集中して呼びかけないと回答が集まらない懸念もあります。定期的なリマインドと組み合わせるのがポイントです。


4. 集計・分析のコツ

4-1. 定量データの可視化

5段階評価の平均点や、「良い」「普通」「悪い」の割合などは、グラフ化することで変化や傾向を把握しやすくなります。ExcelやBIツールを使って時系列で推移を追ったり、部門ごとに比較したりすることで、どこに力を入れるべきかが見えてくるでしょう。また、サンプル数(回答数)が十分あるかどうかも考慮が必要です。回答が数件しかないと極端な評価になる場合があります。

4-2. 自由記述のテキストマイニング

自由記述欄には、具体的なエピソードや感情が込められたコメントが多く含まれるため、サービスデスク改善の宝庫とも言えます。しかし、一つひとつ目を通すのは骨が折れる作業です。テキストマイニングツールやキーワード分析を活用し、「よく使われる単語」「ポジティブ/ネガティブの比率」などをざっとチェックすることで、回答内容を効率的に整理できます。特に「遅い」「不親切」「ありがとう」「助かった」といった感情を示す単語に着目すると、対応品質やスタッフの態度に関する手がかりが得られるでしょう。

4-3. 分析結果の共有方法

アンケート結果は、サービスデスク内部だけでなく、上層部や関係部署にも共有し、協力を仰ぐ材料にできます。たとえば「エスカレーション先の専門チームへの不満が多い」という結果が出たら、該当チームと連携して問題を解消する必要があります。可視化されたレポートを短時間で共有できるように、定型のフォーマットを用意しておくと便利です。


5. 改善アクションとユーザーへのフィードバック

5-1. アクションプランの策定

アンケート分析で判明した課題に対して、具体的な改善アクションを設定しましょう。例えば「一次応答に時間がかかりすぎる」という声が多ければ、対応スタッフのシフトやSLAの見直しを検討します。「専門用語が多くて分からない」という意見が多ければ、FAQの改訂やスタッフのコミュニケーション研修などが考えられます。

5-2. ユーザーへの報告と説明

アンケート協力者に「集計結果」と「今後の改善施策」を簡潔に知らせると、「意見が反映されている」と感じてもらいやすくなります。社内ポータルやメール、掲示板などを活用し、「次のステップとして○○を実行予定です。ご協力ありがとうございました」といったメッセージを発信すると良いでしょう。この“お知らせ”があるのとないのとでは、次回アンケートの回答率に大きな違いが出ます。

5-3. 継続的なPDCAサイクル

アンケート結果をもとに改善策を実施しても、それが本当に効果を発揮したかどうかは、次のアンケートや日常的なモニタリングで確認する必要があります。このように「アンケート→改善→再度アンケート・モニタリング→さらなる改善」のサイクルを回すことで、サービスデスクの品質を段階的に向上させることができます。


まとめ

ユーザーアンケートは、ITサービスデスクの現状を客観的に把握し、改善の優先度を見極めるうえで非常に重要なツールです。ただし、設問が複雑すぎたり、回答に手間がかかりすぎたりすると、十分なサンプルが集まらないリスクがあります。目的を明確にし、設問数や言葉遣いを工夫したうえで、定期的かつ継続的に実施・分析し、改善アクションをユーザーにフィードバックする一連の流れを確立しましょう。

次回の記事では、コールセンターとサービスデスクの連携について扱います。テレフォンサービスを主とするコールセンターと、ITを中心に問い合わせを受け付けるサービスデスクとの間に生じがちなミスや重複対応を減らすためのポイントを解説します。ぜひ続けてご覧ください。

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