久しぶりに出力してみたら、さらにレベルアップしてました。

ITサービスデスクに寄せられる問い合わせ件数が多いほど、スタッフは「内容の分類・振り分け」に大きな負担を強いられます。受付時点で「この問い合わせは誰に回すべきか?」「どのカテゴリに属するのか?」と都度判断を迫られ、その作業が重複すると、対応スピードの低下だけでなくミスが発生するリスクも高まります。そこで注目されているのが、AIや機械学習などを活用した「問い合わせ分類の自動化」です。
本記事では、問い合わせ内容を自動的に振り分けるためのキーワード分析や、適切なツールを選定する際のポイントを解説します。自動化の導入がうまく進むと、サービスデスクの業務効率が格段に向上するだけでなく、ユーザーへの一次回答のスピードアップにも繋がるため、組織全体の生産性アップが期待できるでしょう。
問い合わせを正しくカテゴリ分け・優先度設定できれば、以下のようなメリットがあります。
しかし、大量の問い合わせを人力で分類し続けるには限界があり、分類基準のブレや担当者間の違いも生じがちです。そこで自動化のニーズが高まっています。
一般的な自動分類の流れは、以下のようなステップで進みます。
AIを導入するほどの予算や専門知識がない場合でも、まずはキーワード分析を活用したルールベースの自動分類を試してみることが可能です。例えば「VPN」「リモート接続」などの単語が含まれていれば「ネットワーク関連」、また「サーバー」「データベース」といった用語があれば「インフラ関連」というように分ける方式です。
ルールベース分類を行う際は、あらかじめ「どんなカテゴリをいくつに分けるか」を明確化したうえで、代表的なキーワードやシノニム(同義語)を整理しておきます。たとえば「アカウントロック」「パスワード忘れ」などは「アカウント管理」カテゴリへ振り分ける…といった具合です。問い合わせ履歴をテキストマイニングし、頻出単語を洗い出しておくと抜け漏れを防ぎやすくなります。
より高度なアプローチとして、機械学習や自然言語処理(NLP)を活用する方法があります。具体的には、「過去の問い合わせ文」と「それが最終的に分類されたカテゴリ」を学習データとして機械学習モデルを作り、新たな問い合わせが来た際に自動的に予測させる形です。ルールベースと比べると、曖昧な記述や新たな表現にも適応しやすくなるメリットがあります。
機械学習での自動分類には以下の工程が必要です。
機械学習モデルは、「学習データの量と質」に大きく依存します。ラベル付け(正解データ付与)が不十分だったり、カテゴリの定義が曖昧だったりすると、モデルの精度は期待ほど上がりません。導入初期はある程度誤分類が出ることを前提とし、スタッフによるフィードバックを取り入れて段階的に精度を向上させるアプローチが現実的です。
多くのクラウド型チケット管理システム(Zendesk, Freshdesk, ServiceNow, Jira Service Managementなど)には、キーワード分析やAIベースの自動分類機能が備わっている場合があります。自社でゼロからシステムを開発するよりも、こういった既製品を活用するのが一般的です。選定においては以下の点を確認しましょう。
既製品の機能が合わない場合や、機械学習を大規模にカスタマイズしたい場合は、自社開発やオープンソースソリューションの活用も検討できます。例えばスクリプト言語(Pythonなど)とオープンソースライブラリ(scikit-learn, TensorFlow, PyTorchなど)を使えば、多様なテキスト分類モデルを構築可能です。ただし、導入・運用コストが大きくなる傾向があるため、エンジニアリソースやメンテナンス体制を十分に確保できるかがポイントです。
どれほど性能の良いモデルを導入しても、問い合わせ内容の傾向は日々変化します。新しいサービスのリリースやシステムアップデートがあるたびに、新種の問い合わせが増えることも珍しくありません。そうした変化に対応するためには、スタッフが誤分類に気づいたら正しいカテゴリを再割り当てし、その情報を学習データに反映させる仕組みが必要です。
自動分類はあくまでスタッフの負担を減らすための仕組みであり、最終判断や複雑なケース対応は人間の介在が必要になることも多いでしょう。特に機密性の高い問い合わせや、感情的にこじれそうなクレーム対応など、人の対応が不可欠な場合もあります。自動化によって浮いた時間を、スタッフがコア業務に割けるように設計するのが望ましい形です。
自動分類機能を導入したら、分類精度や対応スピードの変化を定期的に測定し、レポート化することで投資対効果を可視化することが重要です。具体的には「一次分類の正答率(自動振り分けが正しかった割合)」「問い合わせ対応における平均リードタイムの変化」「エスカレーション回数の推移」などをトラッキングし、目標値に向けて改善サイクルを回しましょう。
問い合わせ分類の自動化は、ITサービスデスクにおける生産性を大きく左右する重要テーマです。ルールベースのキーワード分析からスタートして段階的に導入していく方法もあれば、機械学習やAIを積極的に活用して高度な自動振り分けを実現する方法もあります。自社の規模感やITリソース、問い合わせの特徴を踏まえ、最適なアプローチを検討してみてください。
いずれの方法を選ぶにしても、導入したら終わりではなく、運用の中で精度を高め続ける取り組みが欠かせません。スタッフによる最終チェックとフィードバックループを設計し、自動化が実際の業務効率やユーザー満足度向上にどの程度寄与しているかを測定することも大切です。
次回の記事では「新人スタッフ育成プログラム」をテーマに、サービスデスクに新たに加わるメンバーをどうオンボーディングし、早期に戦力化するかというポイントを解説します。人材不足や教育コストの課題を抱えるサービスデスクでお悩みの方は、ぜひご覧ください。