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はじめに
全6話にわたってゼロトラストの概念や導入ステップ、運用方法を学んできました。最終回の第6話では、ゼロトラストの今後の方向性や注目のトピックを概観し、ゼロトラストの導入を検討する際の重要なポイントを整理します。これから導入を検討する企業・組織へのメッセージとして、ぜひ参考にしてください。
ゼロトラストの今後の方向性
ハイブリッド環境でのさらなる普及
企業内にはオンプレミスのレガシーシステムや各種クラウドサービスが混在するハイブリッド環境が多いのが現状です。ゼロトラストのソリューションプロバイダも、オンプレとクラウドを横断的にカバーする製品を続々リリースしています。
5G/IoT時代への対応
5GやIoTの普及により、ネットワークに接続されるデバイスが爆発的に増えています。ゼロトラストの考え方は、これらのデバイスを一律で信用しないという前提に立つため、大規模ネットワークでも有効です。
AIとの融合
AI技術を活用した高度な脅威検知や自動対応が当たり前となり、ゼロトラストの監視・運用をさらに効率化します。将来的には、人手を介さずとも自律的に脅威をブロックできるレベルに到達する可能性があります。
国際標準・ガイドラインの充実
NISTや欧州委員会など、各国の公的機関がゼロトラスト関連のガイドラインや標準化を進めています。今後は法規制面でもゼロトラストが推奨される流れが加速するでしょう。
ゼロトラスト運用のポイント
ポイント1:リモートアクセス環境の最適化
国内外に拠点を持つ企業では、リモートワークや出張先からの安全なアクセスが重要になります。従来のVPNだけでは運用負荷が大きく、セキュリティリスクも増大するため、多要素認証(MFA)やシングルサインオン(SSO)を活用したゼロトラスト対応のアクセス管理が求められます。
ポイント2:クラウド環境の安全な運用
クラウドベースの業務環境では、VPN接続を不要とし、ゼロトラストの原則に基づいたアクセス制御を実施することで、管理負担を軽減しつつセキュリティを強化できます。SSOとMFAを組み合わせることで、利便性と安全性の両立が可能になります。
ポイント3:自治体や公共機関のゼロトラスト活用
マイナンバー関連業務や住民サービスのオンライン化が進む中で、自治体のシステムは厳格なゼロトラストポリシーを適用することが求められています。ICカードを利用したMFAの導入や、内部ネットワークのセグメント化により、外部委託業者との安全な連携も可能になります。
導入検討中の企業・組織へのメッセージ
1. 段階的アプローチが基本
ゼロトラストは一朝一夕に完成するものではありません。IAM基盤の整備や部分的なマイクロセグメンテーションなど、できるところから始める姿勢が大切です。
2. 経営層の理解と投資
ゼロトラストは企業カルチャーの変革を伴うため、経営層のコミットが不可欠です。セキュリティ投資を「コスト」ではなく、将来のリスク回避と捉えてもらう努力が必要です。
3. 最新動向の継続的なキャッチアップ
ゼロトラスト関連のテクノロジーやガイドラインは進化が速い分野です。定期的に情報収集し、必要に応じてシステムをアップデートし続ける柔軟性が求められます。
4. 教育・トレーニングの強化
組織内のセキュリティ意識を高めるため、社員向けのフィッシング訓練やハンズオン研修を実施しましょう。「ヒューマンファイアウォール」を築くことこそがゼロトラスト成功の鍵です。
まとめ
ゼロトラストは今後も進化し続け、クラウド・5G/IoT・AIなどの新技術と融合しながら、あらゆる業界・規模の組織にとって必須のセキュリティモデルとなっていくでしょう。一方で、運用設計や教育、経営層の理解といった“人と組織”の要素をおろそかにすると、導入が失敗に終わるリスクもあります。
この6話にわたる連載が、皆さまのゼロトラスト導入・運用の一助になれば幸いです。セキュリティはゴールのない道ですが、正しいアプローチを取ることで大きなリスクを回避し、ビジネスの成長を支える土台となるはずです。
参照URL
- NIST SP 800-207 (csrc.nist.gov)
- Forrester Zero Trust (forrester.com)
- 総務省 国民のためのサイバーセキュリティサイト (soumu.go.jp)
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