ゼロトラストアーキテクチャの概念理解:【第5話】ログと異常検知がカギ!ゼロトラスト時代の監視・運用設計

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■ はじめに

第4話では、ゼロトラストと相性の良いMFAやSSOの活用方法を学びました。今回は、ゼロトラスト環境下で非常に重要となる監視・運用設計について深掘りします。ゼロトラストは導入して終わりではなく、常にアクセスやトラフィックを観測し、リスクを評価・検知し続ける体制が求められます。


■ なぜログと異常検知が重要なのか?

  1. ゼロトラストの基本「常に検証」を実現するため
    • ユーザーがアクセスするたびに認証・検証を行うのがゼロトラストの理念ですが、その裏には細かなアクセスログが記録される仕組みが必要です。
  2. 攻撃の早期発見と被害拡大防止
    • フィッシングによるアカウント乗っ取りや内部犯行など、攻撃者がネットワーク内部に入るとき、異常なアクセスパターンやトラフィックが必ず発生します。
    • ログを分析し、通常とは違う挙動を素早く発見・対応できれば、被害を最小限に抑えられます。
  3. コンプライアンス対応
    • 業種によってはアクセスログの一定期間保管や定期的な監査報告が義務付けられています。ゼロトラストを導入することで、より詳細なログが取得できるようになるため、コンプライアンス面でも有利です。

■ 具体的なログ取得ポイント

  1. 認証ログ(IDプロバイダ側)
    • 誰が、いつ、どの場所(IPアドレス)から、どのデバイスを使ってログインしたかを記録します。MFAの成否なども含めてモニタリング対象です。
  2. ネットワークアクセスログ
    • ゼロトラストゲートウェイやマイクロセグメンテーションを担当する機器・サービスから、どのセグメントにアクセスが行われたかをログ化します。
  3. エンドポイントログ
    • クライアントPCやサーバー上でのプロセス実行状況やファイル操作履歴など、EDR/XDRが取得する詳細ログを活用することで、端末単位の異常行動を把握できます。
  4. アプリケーションログ
    • SaaSや業務アプリでの操作履歴、エラーログ、APIアクセスログなど。これらも異常検知に有用な情報を含んでいます。

■ 異常検知の仕組みづくり

  1. SIEM(Security Information and Event Management)
    • 各種ログを一元管理し、相関分析を行うプラットフォームです。Splunk、IBM QRadar、Azure Sentinelなどが代表的な製品・サービスとして知られています。
    • SIEMを活用すると、たとえば「同一アカウントで短時間に異なる国からのアクセスがあった」などのパターンをリアルタイムで検知できます。
  2. UEBA(User and Entity Behavior Analytics)
    • ユーザーや端末の通常行動を学習し、逸脱行動を検知する仕組みです。AIを活用することで大規模なログの中から微妙なパターン変化を捉えることが可能になります。
  3. SOAR(Security Orchestration, Automation and Response)
    • SIEMと連携し、検知したインシデントに対して自動的にアクションを実行する仕組みです。たとえば、怪しいアクセスを検知したら即座にユーザーセッションを切断するなど、人手の介入を待たずに対処できます。

■ 運用とインシデント対応のポイント

  1. アラートの最適化
    • 不要なアラートが多すぎると運用担当者が“アラート疲れ”を起こしてしまいます。優先度や重大度を設定し、本当に緊急性のある通知だけを迅速に対応できる設計が求められます。
  2. インシデントレスポンスチームとの連携
    • SOC(Security Operation Center)やCSIRT(Computer Security Incident Response Team)などの専門チームと連携し、発生したインシデントの調査・封じ込め・根本原因分析を迅速に行う体制を整備しましょう。
  3. 定期的な訓練とシミュレーション
    • ゼロトラスト環境下でも、ランサムウェア侵入や内部不正は起こり得ます。定期的にサイバー演習を行い、ログ分析からインシデント対応まで一連の流れをシミュレートすることが重要です。

■ まとめ

ゼロトラストを実現するには、継続的な監視と異常検知の仕組みが不可欠です。認証ログやネットワークログ、エンドポイントログなどをSIEMやUEBAで相関分析し、必要に応じて自動対処するSOARと組み合わせれば、被害拡大を防ぎやすくなります。
最終回の第6話では、今後のゼロトラストの方向性と、導入成功事例から学ぶ運用ノウハウを総括し、これからゼロトラストを検討する企業・組織へのメッセージをお伝えします。


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