ゼロトラストアーキテクチャの概念理解:【第4話】MFAやSSOで強化するゼロトラスト認証の実践

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■ はじめに

第3話では、ゼロトラスト導入の具体的ステップと主要ツール・サービスについて学びました。今回は、それらを実際に運用する上で欠かせない**多要素認証(MFA)シングルサインオン(SSO)**について詳しく解説します。ゼロトラストの世界では「常に検証」が基本ですが、その際にユーザー体験を損なわないための工夫がMFAやSSOとなります。


多要素認証(MFA)の重要性

1. パスワードだけでは不十分

パスワードはフィッシングやリスト型攻撃によって簡単に漏洩するリスクがあります。そのため、パスワード単体では安全性を確保できません。MFA(Multi-Factor Authentication)を導入することで、仮にパスワードが流出しても、追加の認証要素(ワンタイムパスコード、生体認証など)が必要となり、攻撃の成功率を大幅に下げることができます。

2. ゼロトラストの基本「常に検証」に適合

ゼロトラストの考え方では、すべてのアクセスを信用せず、常に検証することが基本です。そのため、特にリスクの高いアクセス(新しいデバイスからのログイン、異常な場所・時間帯でのアクセス)にはMFAを活用した追加認証を求めることが推奨されます。

3. 組み合わせる認証要素の種類

MFAは、以下の異なる種類の要素を組み合わせることで、安全性を向上させます。

  • 知識要素(Something You Know): パスワードやPINコード
  • 所持要素(Something You Have): スマホアプリのトークン(Google Authenticator、Microsoft Authenticator)、セキュリティキー(YubiKey など)
  • 生体要素(Something You Are): 指紋認証、顔認証、虹彩認証

業種やセキュリティレベルに応じて、適切な組み合わせを選定することが重要です。


シングルサインオン(SSO)の役割

1. 利便性とセキュリティの両立

社員が複数のSaaSや社内システムを利用する際、毎回パスワードを入力するのは手間がかかるだけでなく、パスワードの使い回しリスクを高める要因にもなります。
SSO(Single Sign-On)を導入することで、1回の認証で複数のシステムにアクセスできるようになり、利便性が向上するだけでなく、パスワード管理の負担を減らし、セキュリティを強化できます。

2. 組織全体での可視化と統制

SSOを利用すると、「誰が、いつ、どのシステムにアクセスしたか」を一元的に記録・管理できます。これにより、アクセスログの可視化が進み、監査やセキュリティ対応が容易になります。また、アカウントの管理も一元化できるため、退職者のアカウント削除や権限変更の対応が迅速になります。

3. ゼロトラストとの相性

ゼロトラストでは、ユーザー認証が頻繁に求められる場面が増えるため、SSOと組み合わせることで利便性を確保することができます。さらに、条件付きアクセス(Conditional Access)を活用することで、リスクレベルに応じた追加認証(MFA)を自動適用することも可能です。


MFAとSSO導入のポイント

1. 段階的な導入スケジュール

全ユーザーを一斉に切り替えると混乱を招く可能性があるため、まずは管理部門やリモートワーク比率の高い部署から試験導入し、課題を洗い出すことが推奨されます。段階的に適用範囲を拡大することで、スムーズな導入が可能になります。

2. ユーザー教育とサポート体制

  • MFAアプリの使い方やバックアップコードの管理方法をマニュアルやFAQとして整備
  • 「ログインできない場合の問い合わせ先」「復旧手順」 を明確化し、サポート体制を強化
  • フィッシング対策として、正規のログインページを見極める方法を周知

3. 既存システムとの連携チェック

  • レガシーアプリやオンプレミスシステムがSSOやMFAに対応しているかを事前に検証
  • 必要に応じて、SAML、OAuth、OIDCなどのプロトコルを活用し、既存システムとSSOを統合
  • どうしても対応できないシステムがある場合、システムのリプレースや段階的な移行を検討

4. 管理者アカウントへの特別強化

IT管理者や上位権限を持つアカウントは攻撃の標的になりやすいため、以下のような対策が求められます。

  • より強固なMFAを適用(例: FIDO2認証、ハードウェアセキュリティキー)
  • アクセス制限の強化(特定のIPアドレスやデバイス以外からの管理者アクセスを禁止)
  • 管理者専用の特権アカウント(Privileged Access Management, PAM)の導入
  • 定期的なアクセス権限の見直しと監査

■ 具体的ツール例

1. Microsoft Authenticator

Azure ADやMicrosoft 365環境での多要素認証に標準対応しており、プッシュ通知や時間ベースのワンタイムパスコード(TOTP)など、多彩な認証方式をサポートしています。また、SSOとの連携も容易で、ユーザーエクスペリエンスを向上させます。

learn.microsoft.com

2. Google Workspace + Google Prompt

Googleアカウント向けのMFAソリューションとして、スマートフォンアプリや電話による承認を通じて追加認証を行う「Google Prompt」を提供しています。さらに、Google WorkspaceにはSSO機能が組み込まれており、他のSaaSアプリケーションとの連携も可能です。

developers.google.com

3. Okta SSO & Adaptive MFA

IDaaS(Identity as a Service)に特化したプロバイダーで、シングルサインオン(SSO)と多要素認証(MFA)を統合的に提供しています。特に、アダプティブMFAはリスクベースで認証強度を動的に調整でき、セキュリティとユーザー利便性の両立を実現します。

okta.com


■ まとめ

MFAとSSOは、ゼロトラスト環境における認証・アクセス管理の重要な柱です。

  1. MFAはパスワード単体の脆弱性を補い、ゼロトラストの「常に検証」の原則に適合
  2. SSOは利便性を向上させつつ、統一的なアクセス管理を実現し、セキュリティを強化
  3. 導入は段階的に行い、ユーザー教育やサポート体制を整えることが成功のカギ
  4. 管理者アカウントの保護を強化し、組織全体のセキュリティリスクを低減

MFAとSSOを適切に導入し、ゼロトラスト環境に適応した認証基盤を構築することで、安全性と利便性を両立し、強固なセキュリティ体制を実現することが可能になります。

第5話では、ゼロトラストを運用していく中で重要となるログの活用方法異常検知の仕組みについて解説し、さらにインシデント対応との連携についても触れていきます。


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