週刊 AI Governance Watch:AIガバナンスは「国際原則」から「実行時保証とAI主権」へ
本記事で得られる3つのポイント
- EU AI Actは2026年8月2日に新しい適用段階へ入り、欧州委員会と加盟国当局による執行、AI生成コンテンツなどに関する透明性義務が始まった。
- OECDはAI原則を実際の政策へ落とし込む「AI Policy Toolkit」を公開し、AIガバナンスの焦点が原則策定から運用支援へ移りつつある。
- 企業側では、OpenAIのEU対応、Microsoftによる大規模なAIエージェント管理、OneTrustのRuntime Controlなど、実行中のAIを管理する仕組みが目立った。
なぜ重要か
今週は、AIガバナンスについて新しい理念が示されたというよりも、既存の規則や方針が、執行、透明性表示、AI台帳、実行時制御へ移った週として記録しておく必要があります。
前回からの主な変更点
前回の2026年7月27日版では、EU AI Act第50条の透明性ガイドライン、英国AI Security Instituteによる評価中の不正行動、Microsoft Agent 365の企業導入などを扱いました。
今回確認できた主な差分は次のとおりです。
| 分野 | 前回まで | 今回確認できた変化 |
|---|---|---|
| EU AI Act | 8月2日の透明性義務適用を準備 | 8月2日に新たな適用段階へ移行。欧州委員会が7月31日に執行開始を正式発表 |
| OECD | AI原則、Global Dialogue、政策事例の収集 | 7月31日にAI Policy Toolkitを公開。政策立案を支援する実務ツールへ展開 |
| 日本 | ガバメントAI「源内」OSS Ver.2.0計画 | 7月29日にガバメントAI「源内」の公式ロゴを公開。制度面の大きな更新はなし |
| オーストラリア | AI Safety Instituteと消費者安全方針 | AI自動評価の国際的なベストプラクティスを最新資料として掲載 |
| OpenAI | 米国の州・連邦を接続するSafety政策提言 | 7月31日、EU AI Actへの対応方針と透明性・来歴管理の取り組みを公開 |
| Anthropic | Transparency Hub、RSP v3.1 | 7月27日、オープンウェイトモデルに関する立場を公開。能力ベースの安全性評価を提案 |
| Microsoft | ManulifeによるAgent 365採用 | Atosが19,000体規模のAIエージェントを統合管理する事例を公開 |
| OneTrust | Runtime Control関連講演を予定 | 7月28日の講演がオンデマンド公開され、静的審査から実行時制御への移行を提示 |
| xAI | Safety Frameworkの大きな更新なし | 公式企業情報が7月30日に更新されたが、包括的Safety Frameworkは確認できず |
| OWASP・ISO | 現行版を継続確認 | OWASP LLM Top 10は2025版、Agentic Applicationsは2026版を継続。ISO/IEC 42001も変更なし |
今週の更新概要
EU AI Actが2026年8月2日に新たな適用段階へ
事実
欧州委員会は2026年7月31日、EU AI Actについて、8月2日から新しい規則と透明性義務の執行を開始すると発表しました。
今回の適用段階では、AIシステムの透明性に関する規定が重要な位置を占めます。
対象には、主に次のような場面が含まれます。
- 人がAIシステムと直接対話する場合
- AIが生成または加工したコンテンツ
- ディープフェイク
- 感情認識システム
- 生体情報を用いた分類
- 公共的な問題について公開される一定のAI生成文章
提供者側には、利用者がAIと対話していることを認識できる設計や、AI生成コンテンツを検出可能にする機械可読形式への対応が求められます。
導入者側には、ディープフェイクや一定のAI生成文章について、人が認識できる形で表示する義務があります。
分析
今回の節目は、EU AI Actのすべての規定が一斉に適用されたことを意味するものではありません。
規定ごとに適用時期が異なるため、8月2日を「AI Actの全面施行日」とだけ表現すると、少し粗い整理になります。
今週の記録として重要なのは、AI生成物やAIとの対話について、表示や識別を実際のサービスへ組み込む段階に入ったことです。
今後は次の点を確認していきます。
- 各サービスで使われるAI表示
- 機械可読マークの方式
- 画像、映像、音声、文章での表示差
- Code of Practiceの採用状況
- 加盟国当局による初期の執行事例
OECDがAI Policy Toolkitを公開
事実
OECDは2026年7月31日、「OECD AI Policy Toolkit」を公開しました。
このツールは、OECD AI Principlesを政策へ移すための、非拘束的な実務支援ツールとして位置付けられています。
各国の政策事例やガイダンスを検索し、政策課題に応じた選択肢を探せる構成です。OECDは、AI原則を定義する段階から、各国が実際に政策を設計する段階への移行を支援すると説明しています。
また、OECDは7月31日、AI規制サンドボックスが責任ある技術開発と政策学習にどのように役立つかを整理した記事を公開しました。
分析
OECD AI Principlesは、信頼できるAIに関する共通原則として長く参照されてきました。
今回のToolkitは、その原則を、
- どの政策分野で扱うか
- 他国はどのように実施しているか
- どの制度や手段を組み合わせるか
という政策実務へ接続するものです。
AIガバナンスの議論が「どの原則が正しいか」から、原則をどのように制度へ移すかへ進んでいることが分かります。
UNESCOは教育と実装支援を継続
事実
UNESCOとLG AI Researchは2026年7月20日、AI倫理に関する無料のGlobal MOOCを公開しました。
UNESCOのAI倫理勧告を、企業、開発者、政策担当者、一般利用者が学べるオンライン講座として提供するものです。
Global AI Ethics and Governance Observatoryでは、各国のAI政策、Readiness Assessment、Ethical Impact Assessment、実装事例の集約が続いています。
分析
今回の調査期間に、UNESCOから新しい拘束的規則は確認できませんでした。
一方で、AI倫理勧告を研修、評価手法、各国支援へ落とし込む動きが続いています。
国際原則を作る機関というより、原則を各国の制度と人材育成へ移す役割が強くなっています。
米国とNIST
NIST AI RMF
事実
NIST AI RMF 1.0は引き続き改訂作業中です。
AI RMF Playbookについても、本体の改訂後に更新される予定と案内されています。
重要インフラ向けの「AI RMF Profile on Trustworthy AI in Critical Infrastructure」は、プロジェクト継続中です。
分析
今回の調査期間に、AI RMF改訂版の公開は確認できませんでした。
そのため、現時点では引き続き次の4機能が基準になります。
- Govern
- Map
- Measure
- Manage
英国、カナダ、オーストラリアなどでAI評価手法の共通化が進んでおり、これらがNIST AI RMFのMeasureやManageへどのように反映されるかが今後の確認点です。
米国全体
事実
今回の調査期間に、米国全体へ適用される包括的な連邦AI法の成立は確認できませんでした。
OpenAIは7月15日、カリフォルニア、ニューヨーク、イリノイなどの州法を共通の連邦基準へ接続する「reverse federalism」の考え方を提示しています。
同社が挙げる主な要素は、次の3点です。
- Frontierモデルの安全性評価と公開
- 重大インシデントの報告
- 独立した監査と説明責任
分析
米国では、EUのような単一の包括法ではなく、州法、連邦機関、NIST、国家安全保障政策、企業の自主的枠組みが並行しています。
州ごとの制度が似た構造へ近づくのか、連邦基準へ統合されるのかを引き続き確認します。
英国
AI Security Institute
事実
英国AI Security Instituteでは、前回扱った次の研究が引き続き最新の主要更新です。
- Frontierモデル評価中の不正行動
- AI企業の内部監視機能を検証するControl Red Team
- Kimi K3のサイバー能力評価
- AI評価機関間の国際的な測定・評価協力
Kimi K3の評価では、GLM-5.2を上回った一方、米国の先端的なクローズドモデルより低い結果だったと報告されています。
分析
今回の調査期間に、新しい主要研究の追加は確認できませんでした。
ただし、評価対象がAIモデルの出力だけでなく、
- モデルが評価を認識していないか
- 不正な解法を使用していないか
- 内部監視が機能しているか
- 評価結果を再現できるか
へ広がった流れは継続しています。
日本
ガバメントAI「源内」
事実
デジタル庁は2026年7月29日、ガバメントAI「源内」の公式ロゴを公開しました。
7月24日には、OSS Ver.2.0計画に関するオンライン説明会も公表されています。
さらに、国内クラウド上で国内基盤モデルを試行利用する取り組みが7月10日から始まっています。
分析
今週の更新はロゴ公開が中心で、AIガバナンス制度自体の大きな変更は確認できませんでした。
今後の確認対象は、OSS Ver.2.0で次の項目がどのように扱われるかです。
- AIエージェントの権限
- 利用者認証
- 操作ログ
- 外部データとの接続
- 国内基盤モデルの選択
- モデル変更時の評価
- 生成物の表示や来歴管理
韓国
事実
韓国ではAI Basic Actにより、AI産業の育成と信頼性確保を組み合わせた国家的な統治枠組みが進められています。
7月23日には、Sovereign AIモデルを一般利用者向けサービスへ展開する「AI for All Project」が公表されました。
韓国科学技術情報通信部はAnthropicとの協力についても公表し、モデル評価、自律型AIエージェントの安全性評価、サイバー脅威情報の共有を進めるとしています。
分析
今週の大きな制度変更は確認できませんでした。
ただし、Sovereign AIと国外AI企業との安全性協力を同時に進めている点は特徴的です。
国内モデルを育成しながら、評価手法やセキュリティでは国際連携を維持する構造が見えます。
シンガポール・ASEAN
シンガポール
事実
IMDAの「Model AI Governance Framework for Agentic AI」Version 1.5が、引き続き主要な指針です。
同Frameworkでは、次のような管理が示されています。
- AIエージェントの責任者
- 権限と行動範囲の制限
- 人間による監督
- 技術的な安全対策
- 利用者への通知
- 稼働後の監視
分析
今回の調査期間に、新版の公開は確認できませんでした。
シンガポールでは、Agentic AIに関するルールだけでなく、Sandboxや企業導入プログラムを並行して進める傾向が続いています。
ASEAN
事実
ASEAN全体では、既存のASEAN Guide on AI Governance and Ethicsを置き換える新しい共通規則は確認できませんでした。
分析
ASEAN Guideは地域共通の参考資料ですが、各国の個人情報保護法、消費者保護、金融規制、AI政策を代替するものではありません。
地域共通ガイドと各国制度を分けて確認する必要があります。
中国
事実
前回扱った2026 World Artificial Intelligence Conferenceと、国際AI倫理ガバナンスおよびAI協力に関する行動計画以降、今回の調査期間に大きな追加文書は確認できませんでした。
分析
今後は、7月に示された行動計画が次の領域で具体化するかを確認します。
- 技術標準
- データ協力
- 計算資源
- 人材育成
- 開発途上国支援
- AI倫理評価
- 国際機関との連携
UAE・サウジアラビア
UAE
事実
今回の調査期間に、UAEのAI戦略やAIガバナンス制度を大きく変更する包括的な公式文書は確認できませんでした。
分析
UAEではAI専用制度だけでなく、データ保護、クラウド、金融、医療、政府調達、フリーゾーンごとの規則を併せて確認する必要があります。
サウジアラビア
事実
サウジアラビアでは、2026年9月にリヤドでUNESCO Global Forum on the Ethics of AIが予定されています。
今回の調査期間に、新しい包括的AI法の公表は確認できませんでした。
分析
9月の会合では、AI倫理原則から行政・産業での実装へ、どの程度具体的な文書が示されるかが確認点になります。
オーストラリア
事実
オーストラリアAI Safety Instituteは、AI能力を大規模に測定・比較するための「自動評価のベストプラクティス」を最新資料として掲載しています。
これはInternational Network for Advanced AI Measurement, Evaluation and Scienceによる国際的な取り組みです。
同国政府は7月20日、Safety by Design、プライバシー、職場、消費者保護、政府による自動意思決定、Agentic Commerceなどを含むAI消費者安全上の優先事項を示しました。
分析
オーストラリアの方向性は、単一のAI法にすべてを集約するというより、既存制度ごとにAIの影響を確認するものです。
自動評価の共通化が進めば、モデルやシステムを国をまたいで比較しやすくなる可能性があります。
カナダ
事実
Canadian Artificial Intelligence Safety Instituteが7月8日に公開した、AI評価結果の報告方法に関する資料が引き続き最新の主要更新です。
また、英国AISIとの共同モデル評価や、オーストラリアとの評価・測定協力が続いています。
分析
今回の調査期間に、新しい包括的なAIガバナンス制度は確認できませんでした。
カナダの役割は、国内政策だけでなく、各国AI Safety Institute間の評価方法の標準化へ広がっています。
国際標準・AIセキュリティ
OWASP Top 10 for LLM Applications
事実
現行の主要版は、OWASP Top 10 for LLM Applications 2025です。
主なリスクには次が含まれます。
- Prompt Injection
- Sensitive Information Disclosure
- Supply Chain
- Data and Model Poisoning
- Improper Output Handling
- Excessive Agency
- System Prompt Leakage
- Vector and Embedding Weaknesses
- Misinformation
- Unbounded Consumption
今回の調査期間に、2025版を置き換える新版は確認できませんでした。
OWASP Top 10 for Agentic Applications
事実
Agentic Applications Top 10 for 2026は、引き続きAgentic AIの主要なリスク分類です。
主な項目は次のとおりです。
- Agent Goal Hijacking
- Tool Misuse
- Identity and Privilege Abuse
- Agentic Supply Chain Vulnerabilities
- Unexpected Code Execution
- Memory and Context Poisoning
- Insecure Inter-Agent Communication
- Cascading Failures
- Human-Agent Trust Exploitation
- Rogue Agents
分析
今回、新版は確認できませんでした。
一方でMicrosoftやOneTrustの実装を見ると、OWASPが整理したリスクが、製品上の権限管理、Runtime Policy、ログ、緊急停止へ接続され始めています。
ISO/IEC 42001
事実
ISO/IEC 42001:2023は引き続きAIマネジメントシステムの主要な国際標準です。
今回の調査期間に、新版の公開は確認できませんでした。
ISO/IEC 42001の導入支援に関するISO/IEC 42003は、現在も開発中です。
分析
ISO/IEC 42001は、個別モデルの安全性を保証する認証ではありません。
組織がAIをどのように管理し、責任を割り当て、リスクを評価し、継続的に改善するかを扱います。
今週は規格自体の変更よりも、企業製品側で継続監視と実行時制御が具体化した点が目立ちました。
主要AI企業の更新
OpenAI
事実
OpenAIは2026年7月31日、EU AI Actの新しい適用段階に合わせ、「Advancing responsible AI across Europe」を公開しました。
同社は次の2つのCode of Practiceを支持したと説明しています。
- GPAI Code of Practice
- Code of Practice on Transparency of AI-Generated Content
安全性評価、サイバーセキュリティ、透明性、コンテンツ来歴、外部評価機関との連携を、EUでの責任あるAI提供に接続するとしています。
分析
OpenAIの今回の文書は、新しいSafety Frameworkの発表というより、既存の安全性・透明性施策をEU AI Actへ対応付けたものです。
今後は、生成コンテンツの表示や来歴情報が、ChatGPTやAPI利用時にどのように実装されるかを確認します。
Anthropic
事実
Anthropicは2026年7月27日、オープンウェイトモデルに関する立場を公開しました。
同社は、オープンウェイトという形式自体を一律に禁止するのではなく、十分に高い能力を持つモデルについて、オープン・クローズドを問わず、サイバー、生物、アラインメントの安全性評価を義務付けるべきだと述べています。
分析
モデルの配布形態ではなく、能力とリスクを基準に評価する考え方です。
今後は「十分に高い能力」を、どの指標や閾値で判断するかが課題になります。
Google・Google DeepMind
事実
今回の調査期間に、前回扱ったBioresilience方針を置き換える新しい包括的Safety Frameworkは確認できませんでした。
分析
Google DeepMindについては、次の情報を継続して確認します。
- Frontier Safety Framework
- 生物安全評価
- Agent Safety
- モデルの自律性評価
- 外部研究機関との共同評価
Microsoft
事実
Microsoftは2026年7月28日、2026会計年度の企業AI導入事例を公開しました。
AtosはMicrosoft Foundry、Copilot Studio、Agent 365を使用し、19,000体規模のAIエージェントを、統一された運用モデルで構築・管理していると説明されています。
管理対象には、生産性、セキュリティ、コンプライアンス、Agent Governanceが含まれます。
MicrosoftのAgent Governance Toolkitは、実行時ポリシー、ID、監査ログ、信頼性管理をAgentic AIへ組み込むオープンソースツールとして提供されています。
分析
19,000体という規模は、AIエージェント管理が将来の想定ではなく、実際の企業運用に入っていることを示す事例です。
管理単位も「モデル」だけでは足りず、
- エージェント
- 所有者
- 利用目的
- 接続先
- 使用データ
- 実行権限
- 稼働状態
- 操作履歴
へ広がっています。
IBM
事実
今回の調査期間に、前回扱った次の製品群を置き換える大きな公式更新は確認できませんでした。
- AI Asset Discovery
- Agentic Control Plane
- Use Case Onboarding
- 継続的AI Assurance
分析
IBMについては、AI資産の発見から登録、評価、監視までを一つの管理構造へ接続する方向が続いています。
今後は実際の顧客導入事例と、他社Agent基盤との接続を確認します。
Palantir
事実
Palantir AIPの2026年リリースノートでは、モデル接続、Ontology、Observability、Security and Governanceなどの更新が継続しています。
今回の調査期間に、AIPのガバナンス構造を大幅に変更する発表は確認できませんでした。
分析
Palantirの特徴は、AIを既存の利用者権限、データ権限、Ontology、監査ログへ接続する点です。
新しい独立したAI管理層を置くというより、既存の業務・データ統制へAIを組み込む構造が続いています。
xAI
事実
xAIの公式企業ページは2026年7月30日付で更新されていますが、今回の調査期間に新しい包括的なSafety FrameworkまたはGovernance Frameworkは確認できませんでした。
xAI APIについては、SOC 2 Type 2への準拠と、NDA締結顧客向けTrust Centerが案内されています。
分析
企業向けセキュリティ情報は確認できますが、モデル能力評価、重大リスク、外部評価、インシデント報告をまとめた公開資料は限定的です。
他の主要AI企業との透明性情報の差を継続確認します。
OneTrust
事実
OneTrustは7月28日に実施した「From AI Risk to Runtime Control」の録画を公開しました。
同社は、事前のリスク審査やAI台帳だけではなく、稼働中のAIについて次を行う必要があると説明しています。
- AI、モデル、エージェントの自動検出
- データとの接続関係の把握
- ポリシーの自動適用
- リアルタイム監視
- 違反時の制御
- 監査証跡の保存
分析
OneTrustが示すRuntime Controlは、ガバナンス文書を整備するだけでなく、AIの動作中にポリシーを適用する考え方です。
ただし、製品説明と第三者による実装評価は分けて確認する必要があります。
気になったポイント
EU AI Actは「予定」から「執行」へ移った
前回までは、8月2日に何が適用されるかを確認する段階でした。
今回は実際に日付を迎え、透明性義務と当局による執行が始まりました。
今後は制度文書よりも、サービス上の表示や当局の判断が重要な情報になります。
AIガバナンスの対象が「AIモデル」から「稼働するエージェント群」へ広がっている
MicrosoftのAtos事例では、19,000体のAIエージェントが管理対象として示されました。
モデル数ではなく、実際に動くエージェント数が管理規模を決めるようになっています。
AI台帳にも、モデル名だけでなく、エージェントの所有者、権限、接続先、状態を記録する必要が出てきそうです。
原則、規則、製品の境界が近づいている
OECDは原則を政策Toolkitへ移し、EUは透明性義務を執行へ移し、企業はRuntime Controlを製品へ組み込んでいます。
それぞれ別の動きですが、
原則を定める
規則へする
システムへ実装する
稼働中に確認する
という流れがつながり始めています。
備忘録
- EU AI Actの2026年8月2日適用後、最初の執行事例を確認
- AI生成コンテンツの表示方法と機械可読マークを確認
- OpenAI以外のGPAI提供者によるEU対応文書を確認
- OECD AI Policy Toolkitの収録事例と更新頻度を確認
- NIST AI RMF改訂版の公開時期を継続確認
- ガバメントAI「源内」OSS Ver.2.0の説明資料を確認
- 韓国AI Basic Actの施行細則と運用事例を確認
- シンガポールAgentic AI Frameworkの次回改訂を確認
- 英国AISIのControl Red Team追加報告を確認
- オーストラリアAISIの自動評価ガイダンス本文を確認
- Anthropicの能力ベース安全性評価の閾値を確認
- Microsoft Agent 365における19,000体の管理方法を確認
- OneTrust Runtime Controlの実装事例と第三者評価を確認
- xAIの公開Safety FrameworkまたはTransparency Reportの有無を継続確認
- ISO/IEC 42003の開発状況を確認
まとめ
今週の大きな節目は、EU AI Actが2026年8月2日に新しい適用段階へ入ったことです。
透明性義務は、AIを使っていることやAI生成物であることを、利用者や閲覧者が認識できるようにするものです。
同時に、OECDではAI原則を政策へ落とし込むToolkitが公開され、企業側では多数のAIエージェントを登録・監視・制御する事例が増えています。
今回の変化を並べると、AIガバナンスは次の段階へ進んでいます。
- 原則を示す
- 規則を作る
- 表示方法を定める
- AIやエージェントを登録する
- 稼働状況を監視する
- 実行時にポリシーを適用する
- 問題発生時に追跡・停止する
「安全なAIとは何か」を議論する段階から、安全性や透明性をどのように確認し続けるかへ、焦点が移っていることが今週の記録として残ります。
参照URL
EU AI Act
https://digital-strategy.ec.europa.eu/en/policies/regulatory-framework-ai
https://digital-strategy.ec.europa.eu/en/policies/guidelines-transparency-ai-generated-content
https://digital-strategy.ec.europa.eu/en/policies/code-practice-ai-generated-content
https://digital-strategy.ec.europa.eu/en/factpages/quick-facts-transparency-rules-ai-systems
OECD
https://oecd.ai/en/wonk/the-oecd-ai-policy-toolkit-better-ai-policies-for-better-lives
https://oecd.ai/en/wonk/sandboxes-matter-responsible-innovation-public-trust
https://oecd.ai/en/dashboards/policy-initiatives/global-dialogue-on-ai-governance
UNESCO
https://www.unesco.org/ethics-ai/en
https://www.unesco.org/en/articles/unesco-and-lg-ai-research-launch-global-mooc-ethics-ai
https://www.unesco.org/en/forum-ethics-ai
NIST
https://www.nist.gov/itl/ai-risk-management-framework
https://www.nist.gov/itl/ai-risk-management-framework/nist-ai-rmf-playbook
英国
https://www.aisi.gov.uk/blog/preliminary-assessment-of-kimi-k3s-cyber-capabilities
https://www.aisi.gov.uk/category/safeguards
日本
https://www.digital.go.jp/policies/genai
https://www.digital.go.jp/en/policies/genai
https://www.digital.go.jp/en/resources/standard_guidelines
韓国
https://www.msit.go.kr/eng/bbs/list.do?mId=4&mPid=2&sCode=eng
https://www.msit.go.kr/eng/bbs/view.do?bbsSeqNo=42&mId=4&mPid=2&nttSeqNo=1071&sCode=eng
シンガポール
https://www.imda.gov.sg/about-imda/emerging-technologies-and-research/artificial-intelligence
オーストラリア
https://www.minister.industry.gov.au/charlton/media/ai-consumer-safety-priorities
https://www.industry.gov.au/publications/international-ai-safety-report-2026
OWASP・ISO
https://owasp.org/www-project-top-10-for-large-language-model-applications
https://genai.owasp.org/llm-top-10
https://genai.owasp.org/resource/owasp-top-10-for-agentic-applications-for-2026
https://www.iso.org/standard/42001
https://www.iso.org/standard/91021.html
OpenAI
https://openai.com/index/advancing-responsible-ai-across-europe
https://openai.com/index/advancing-ai-safety-through-state-and-federal-action
https://openai.com/index/openai-frontier-governance-framework
Anthropic
https://www.anthropic.com/news/position-open-weights-models
https://www.anthropic.com/responsible-scaling-policy
https://www.anthropic.com/transparency/system-trust-reporting
Microsoft
https://adoption.microsoft.com/en-us/ai-agents/microsoft-agent-365
Palantir
https://www.palantir.com/docs/foundry/announcements/release-notes
https://www.palantir.com/platforms/aip
https://www.palantir.com/pcl/palantir-ai-ethics
xAI
https://docs.x.ai/developers/faq/security
https://x.ai/legal/privacy-policy
OneTrust
https://www.onetrust.com/resources/from-ai-risk-to-runtime-control-webinar
https://www.onetrust.com/resources/governing-ai-at-runtime-webinar