【第3回】現状のITインフラ・データ管理状況の把握

はじめに

前回は、「プロジェクト体制の整備」についてご紹介しました。プロジェクトを円滑に進めるには、経営層や各部署、そしてIT・分析担当が連携できる枠組みが大切でしたね。
しかし、いざデータ活用を始めるとなると、まず最初にぶつかるのが「データがどこにあるのか」「どのように管理されているのか」がわからない、という問題です。特に中小企業では、表計算ソフトや紙ベースの資料など、それぞれの部門や個人がバラバラに管理しているケースが珍しくありません。

そこで今回は、データ活用の出発点として「現状のITインフラ・データ管理状況の把握」について解説していきます。何がどこにあるかを整理し、問題点を洗い出すことで、今後のデータ分析プロジェクトの方向性や優先度付けが見えてきます。


1. なぜ「現状把握」が必要なのか

  1. データの所在や形式がバラバラ
    • 例:顧客リストが営業部と経理部で別々に保管されていて、整合性がとれていない。
    • 例:紙ベースで注文書を管理しており、デジタル化されていない。
  2. ITインフラの制限を理解していないとトラブルが発生
    • 例:サーバー容量が不足していて新しいシステムを導入できない。
    • 例:ネットワーク速度が遅く、分析ツールが動かない。
  3. セキュリティリスクを把握しないまま導入すると危険
    • 例:アクセス制限が甘く、機密情報に誰でもアクセスできる状態。
    • 例:バックアップ体制がなく、データが消失するリスクがある。

現状把握を行うことで、データ活用の準備段階で起こりうるトラブルを未然に防ぐことができます。


2. ITインフラ・データ管理状況を調査する主なポイント

  1. 主要システムのリストアップ
    • まずは社内で使用されている基幹システム(会計、販売管理、人事給与など)や、各部署が利用している専門システム(生産管理、顧客管理など)を洗い出します。
    • これらのシステムがどのようなデータを扱っているか、データベースはどこにあるのか、どのくらいのボリュームなのかを確認しましょう。
  2. データの保管場所・形式の棚卸し
    • 組織が大きくなくても、部門ごとにデータの管理方法は様々です。ExcelやAccess、紙書類、外部クラウドサービス(Google Drive、Dropboxなど)など、多岐にわたるケースがあります。
    • 可能な範囲で「誰がどんなファイルをどこに保管しているのか」を可視化し、不明点や重複箇所を整理します。
  3. ネットワーク環境とハードウェア
    • サーバーのスペック(CPU、メモリ、ストレージの容量)は十分か?
    • ネットワーク速度は問題なく運用できるレベルか?
    • バックアップの仕組み(自動バックアップ、災害対策など)はどうなっているか?
  4. セキュリティ・アクセス権限の状況
    • 重要情報へのアクセス制御はどのように行われているか?
    • 個人情報や取引先情報を取り扱う場合、社外流出を防止する仕組み(暗号化、VPNなど)はあるか?
    • ITガバナンスや情報セキュリティポリシーは文書化されているか?
  5. 既存の業務フローとの関連
    • データ活用のプロセスで必ず関連するのが、実際にそのデータを入力・出力している業務フローです。
    • 例:受注→在庫管理→出荷→請求という流れで、データの更新がどこで行われるかを把握しておくと、分析に使えるタイミングやデータ更新頻度が明確になります。

3. おすすめの手順・進め方

  1. 情報システム部門と各部署のキーパーソンが連携
    • ITインフラの現状把握だけでなく、各部署がどのようなツールやファイルを使っているかを知るために、部門代表や実務担当者へのヒアリングを実施しましょう。
  2. 全体を俯瞰する「データマップ」を作る
    • エクセルなどで表にまとめたり、図で表してもOKです。
    • 「データソース(システム名・ファイル名)」「保管場所(サーバー名・クラウド・ローカルPCなど)」「担当部署・担当者」「保有データの概要(顧客情報、売上データなど)」を一覧化すると見やすくなります。
  3. データ品質や整合性の問題をチェック
    • データ形式が部署ごとにバラバラ(例:日付形式が異なる)
    • 重複や欠損が多い(例:顧客名の表記ゆれ、郵便番号が入っていない)
    • システム間連携がなく、同じ情報を二重で入力している
      これらの問題を検出したら、後に解決策を検討します。
  4. 現場でのITリテラシーを確認
    • 新しいシステムやクラウドツールを導入する場合、ユーザーのITリテラシーによってスムーズに運用できるかどうかが左右されます。
    • 部署や担当者ごとに教育の必要性を把握しておくと、後の研修計画が立てやすくなります。

4. 具体例

  • 事例A:製造業での棚卸し
    • 工場の生産管理システムはオンプレミス(自社サーバー)、在庫管理はExcel、品質検査データは紙書類→入力担当がExcelに手打ち。
    • ヒアリングの結果、在庫管理と品質検査データに重複入力や漏れが多いことが判明。自社サーバーが老朽化しており、バックアップが月1回のみ。
    • 対策として、クラウドへの移行や入力フローの見直しを検討する必要性が浮上。
  • 事例B:小売業での棚卸し
    • POSシステムは大手ベンダー製だが、日次売上をCSVで出力し、店舗ごとにExcelで加工。
    • 経理部門はクラウド会計ソフトを利用しており、売上データを手動で入力している。
    • ネットワークは店舗と本部がVPNで繋がっているが、頻繁に通信速度が落ちて作業に影響が出ている。
    • 短期的にはVPN回線の見直し、中長期的にはPOSと会計システムの自動連携を図る方針を立案。

5. 調査結果を経営層・プロジェクトメンバーと共有する

現状調査でわかったポイントを、以下のような形で共有します。

  1. レポート化 or ドキュメント化
    • 「主要システム一覧」「データマップ」「問題点一覧」を資料化。
    • PDFやスライドなどでまとめると、関係者が共通認識を持ちやすくなります。
  2. 課題リストの作成
    • 今後解決すべき課題(老朽化したサーバーの更新、クラウド移行、データ整合性の確保など)をリストアップし、優先度や必要コスト、担当部門を明確化しておきましょう。
  3. プロジェクトのロードマップに反映
    • 課題によっては、短期で取り組むべきものと長期的に検討するものがあるため、プロジェクトのステップに組み込みます。
    • これを行うことで、あとで「こんなデータが必要だったのに取り揃えていなかった…」と後悔するリスクを減らせます。

6. 今回のまとめ

「データ活用を始めたい」という気持ちがあっても、まずは「どんなデータが、どこに、どんな形で存在するのか」を正確に把握しなければ、プロジェクトは前進しにくいものです。現状のITインフラ・データ管理状況を洗い出すことで、

  • データ取得や分析のしやすさ
  • システムの制約やセキュリティ面
  • 不足しているリソースやスキルセット

などがクリアになり、次のステップに進む準備が整います。

次回は「データ活用の全社教育計画」について解説します。ITリテラシーや分析スキルを、どのように全社員に浸透させるのか――研修手法や計画の立て方などをご紹介します。


次回予告

「第4回:データ活用の全社教育計画」
データ分析を使いこなすには、全社員の意識改革や基礎知識の習得が欠かせません。eラーニング、研修、勉強会など、企業規模に合わせた教育プランの立て方をご説明します。り、どんなフォーマットで保管され、どの程度整合性が取れているのかをチェックし、これからのデータ活用に必要な準備を具体的に進める方法をお伝えします。

コメントを残す

好奇心旺盛 48歳関西人のおっさん