CTFやゲーミフィケーションを用いた学習プログラム:【第5話】ゲーミフィケーション導入事例:企業や教育機関での成功パターン

■ はじめに

前回はゲーミフィケーションの基本概念や、セキュリティ学習における利点を紹介しました。第5話では、セキュリティ教育の現場で実際にゲーミフィケーションを取り入れ、成功している一般的な取り組みを紹介し、どのようなポイントが成功のカギとなっているのかを解説します。自社や学校での導入を検討する際の参考にしてください。


事例1:社内CTF+ポイント制による継続学習

ある大手IT企業では、新入社員向けの研修として社内CTF(Capture The Flag)大会を開催しています。CTFは、Web、暗号、ネットワークなど多様なセキュリティ課題を解決する競技形式のイベントであり、新人エンジニアがチームを組み、競い合う形で学びます。

さらに、大会終了後も社内ポータルで常設CTF問題を公開し、社員が継続的に挑戦できる仕組みを整えています。正解すると「セキュリティポイント」が付与され、累積ポイントが一定基準を超えると社内で表彰されるなど、モチベーション向上につながる工夫がされています。

成功のポイント

  • 研修後の継続学習が可能になり、新人エンジニアのスキルアップにつながる。
  • ポイント制やランキングにより、社員の自主的な学習意欲が向上。
  • 上位ランカーはセキュリティ関連プロジェクトへの参加機会が増えるなど、キャリアにも好影響を与える。

事例2:大学での「攻防演習」カリキュラム

情報セキュリティを専門とする大学の一部では、攻防戦型のCTFを授業に組み込む取り組みが行われています。授業の前半では各チームが自分たちのサーバーを構築・強化し、後半では他チームのサーバーに攻撃を仕掛けてFlagを奪うという形式が一般的です。

授業の成績評価には、参加態度、競技の結果、レポート提出などが含まれ、最終的には学術発表会で攻撃手法や防御対策についてプレゼンを行うケースもあります。

成功のポイント

  • 実際の業務に近い形で「守りながら攻める」経験を積むことができる。
  • レポート作成やプレゼンを通じて、理論と実践の両面での理解が深まる。
  • チームでの役割分担や協力を通じて、コミュニケーション能力が向上。

事例3:製造業向けの「セキュリティすごろく」

ITに馴染みの薄い現場社員向けに、ボードゲーム形式でセキュリティ教育を行う企業もあります。例えば、「セキュリティすごろく」を活用し、サイバー攻撃カードと対策カードを用いて、攻撃が発生した際に適切な防御策を実行し、被害を最小限に抑えることを目的としたゲーム形式の研修を実施しています。

このゲームは毎月希望者を募って実施され、優秀なプレイヤーには社内ポイントを付与するなどのインセンティブを用意することで、参加意欲を高めています。

成功のポイント

  • ITの専門知識がなくても、直感的にセキュリティの重要性を学べる。
  • 研修にゲーム要素を取り入れることで、参加率が向上。
  • 部署を超えたコミュニケーションの活性化や、リスク対応意識の醸成に貢献。

成功するゲーミフィケーション研修の共通ポイント

上記の事例に共通する成功のポイントとして、以下の要素が挙げられます。

1. 楽しさと学習効果のバランス

ゲームとしての面白さを維持しつつ、学ぶべき要素をしっかり組み込むことが重要です。単なる娯楽ではなく、実践的なスキルや知識が得られるよう設計することで、学習意欲を継続させることができます。

2. 学習成果の可視化と評価

ポイント制やランキングの導入により、学習成果が可視化されることで、参加者のモチベーションが向上します。また、レポート作成やプレゼンを取り入れることで、振り返りを行い、学習の定着を促すことができます。

3. 組織の文化やニーズに合わせたアレンジ

企業や教育機関ごとに、受講者の特性やニーズを考慮し、研修の形式を調整することが重要です。例えば、ITエンジニア向けにはCTF形式、一般社員向けにはボードゲーム形式など、適切な手法を選択することで、より効果的な学習環境を提供できます。


■ まとめ

ゲーミフィケーションを導入している組織は、楽しさと実務上の学びをリンクさせる工夫を行い、大きな成果を上げています。社内CTFや攻防演習、ボードゲーム型の研修など、導入形態は多様です。次回の第6話では、CTFやゲーミフィケーションの今後の動向と、これから取り組む際の最終的なアドバイスをまとめていきます。


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