■ はじめに
第1話ではCTFがサイバーセキュリティ学習に与えるメリットを紹介しました。第2話では、CTFの種類や代表的な問題形式をさらに詳しく解説し、教育プログラムとしてどのように構成すれば学習効果を最大化できるかを考察します。CTFに参加したい・導入したい方々にとって、具体的なイメージを持つための参考になれば幸いです。
■ CTFの主な開催形式
- Jeopardy(問題解答型)
- 最も一般的なCTF形式。複数のカテゴリ(Web、暗号、バイナリ、フォレンジックなど)の問題が用意され、解けた問題のFlagを提出することでポイントを獲得。
- 難易度はピンキリで、初心者向けから超上級者向けまで設定されることが多い。
- Attack & Defense(攻防戦型)
- チーム同士がサーバーを運用しながら、互いに攻撃と防御を仕掛け合うダイナミックな形式。
- 自チームのサービスの脆弱性を修正(防御)しつつ、相手チームのサービスを攻撃してFlagを盗むなど、リアルタイム性の高い競技となる。
- Mixed / Hybrid
- 上記2つの要素を組み合わせた大会も存在する。最初はJeopardy形式で得点を稼ぎ、後半で攻防戦に突入するなど、多彩な演出が行われる場合もある。
■ 代表的な問題カテゴリ
- Webセキュリティ
- SQLインジェクション、XSS、CSRFなどの脆弱性を見つけて、管理者権限を奪取する問題が多い。
- 現実のWebアプリケーション開発・運用にも直結する知識を得やすい。
- 暗号(Cryptography)
- 古典暗号からモダン暗号まで、暗号文を解読してFlagを得る問題。パディングオラクルやRSAの脆弱性など、数学的素養も求められる。
- バイナリ解析 / リバースエンジニアリング
- 実行ファイルを解析し、暗号鍵やフラグを見つける。脆弱性を利用してシェルを取得する問題などもある。
- アセンブリ言語やメモリ構造への理解が深まるため、OSやシステムの内部を知るうえで有用。
- フォレンジック / OSINT
- ディスクイメージやネットワークトラフィックから、痕跡(ファイル改ざんや通信ログ)を調べる問題。
- SNSやWeb上の公開情報(OSINT: Open Source Intelligence)を駆使して手がかりを探すケースもあり、捜査・調査能力が問われる。
- Pwn / Exploit
- 実行ファイルやサービスに存在するバッファオーバーフローなどを突き、任意コード実行を狙う高度なカテゴリ。
- 攻撃スクリプトの作成やデバッガの使用など、ハッキングの真髄を味わえるが難易度は高め。
■ 教育プログラムへの活用ポイント
- 難易度と範囲の設定
- 参加者のレベルに合わせた問題を用意することが重要。初心者向けには基礎的なWeb脆弱性や簡単な暗号問題からスタートし、上級者向けにはバイナリ解析や高度な攻防戦を。
- 闇雲に難易度を上げすぎると挫折を招くため、段階的なカリキュラムが理想的。
- 実務との関連づけ
- 演習後、「この攻撃手法は実際のWebサービスではどのように防ぐべきか」「どんなログを取れば早期発見できるか」といったリアルな応用をディスカッションすると効果大。
- 攻撃だけでなく、対応策や防御策もセットで学べば、攻守両面のスキルが育つ。
- チームビルディング要素
- CTFは個人競技もあるが、チーム競技にすることで協力体制やコミュニケーションが生まれる。
- 役割分担(暗号担当、Web担当など)を意識することで、専門性の高い人材同士の連携を学ぶ機会になる。
- フィードバックと記録
- 解答解説を充実させ、失敗や成功のポイントを振り返るプロセスを用意する。
- 大会が終わったら各チームのソリューションや攻略法を共有し、ナレッジベースを蓄積するのがおすすめ。
■ まとめ
CTFは大きく分けて「Jeopardy型」と「Attack & Defense型」があり、さらに多彩なカテゴリの問題が存在するため、教育目的や参加者レベルに合わせて選択・構成することが大切です。次回の第3話では、実際にCTFを運営・主催する際の手順や準備作業、そして運営上のポイントなどを具体的に紹介していきます。