投稿日:2025年3月4日 | 最終更新日:2025年3月4日
ここまでランサムウェアやフィッシングの基礎、そして訓練プログラムについて解説してきました。しかし、どれだけ対策していても「100%の防御」は難しく、万が一ランサムウェアに感染してしまう可能性はゼロではありません。第4話では、実際にランサムウェア被害が発生した場合の初動対応や、迅速なインシデントレスポンスの手順を紹介します。
■ ランサムウェア発生時の共通シナリオ
- 端末の画面が突然ロックされる・ファイルが暗号化される
- 多くのランサムウェアは、まずユーザーがファイルにアクセスできなくなり、画面に「身代金を支払え」という警告文が表示されます。
- 企業の場合はファイルサーバーや共有ドライブへのアクセスがブロックされ、業務が停止状態に陥ることも。
- 犯行グループから身代金要求
- 暗号通貨(ビットコインなど)で一定額を支払うよう指示されるケースが一般的です。
- 支払わなければ「データを公開する」「永久に復号できなくする」と脅される場合もあります。
■ 初動対応の流れ
- 感染端末の隔離
- 感染が疑われる端末は、すぐにネットワークから切り離します。LANケーブルを抜くかWi-Fiをオフにし、拡散を防止しましょう。
- 企業のセキュリティ担当者は、サーバーや他のクライアント端末への感染が広がっていないか調査する必要があります。
- インシデントレスポンスチームの招集
- 組織内に設置されている**CSIRT(Computer Security Incident Response Team)**やIT部門と連絡をとり、状況を共有。対応方針を即座に議論します。
- 企業規模によっては外部の専門家やセキュリティベンダーに協力を要請することも検討が必要です。
- 被害範囲と影響度の調査
- どのファイルが暗号化されているのか、サーバーやクラウドサービスへの侵入が確認されているか等を可能な範囲で特定します。
- ログの分析やウイルス対策ソフトのスキャンを実施し、感染経路の特定と再発防止策を考える資料にします。
- 法的・リスク面での判断
- 身代金を支払うかどうかの判断は非常に難しい問題です。基本的には支払わないことが推奨されますが、業務継続のためにやむを得ず支払う企業も存在します。
- 支払う場合でも、法的リスクや攻撃者とのやり取りを慎重に検討すべきです。もし支払ってもデータが復旧しないケースもある点に要注意です。
■ インシデントレスポンスのポイント
- 迅速な情報共有
- 社内関係者はもちろん、外部パートナーや取引先にも影響が及ぶ可能性があるため、必要に応じて迅速に連絡します。
- 顧客情報や個人情報が含まれる場合は、個人情報保護委員会や監督官庁への届け出義務が発生する場合もあります。
- バックアップの活用
- 定期的にオフラインでバックアップを取っていれば、最終的にはそこからデータ復旧が可能です。
- ただし、バックアップ自体が最新でない場合は、復旧後に多少のデータ損失がある可能性があります。
- フォレンジック調査の実施
- フォレンジック調査によって、感染経路や攻撃手法を特定し、再発防止策を講じます。必要に応じて捜査機関(警察やサイバー犯罪対策部署など)に通報することも検討しましょう。
■ まとめ
ランサムウェア感染時は、**「どれだけ早く正しい対応ができるか」**が被害の規模を左右します。初動の段階で感染端末を隔離し、インシデントレスポンスチームを招集することが肝心です。また、日頃からバックアップ体制と通報フローを整えておくことが非常に重要です。
次回第5話では、クラウド環境やリモートワーク下でのランサムウェア・フィッシング対策のポイントに焦点を当て、最新のトレンドを交えながら解説していきます。