週刊 AI Governance Watch:AIガバナンスは「国際原則」から「実行時保証とAI主権」へ
本記事で得られる3つのポイント
- 中国の2026 World AI Conferenceで、国際AI倫理ガバナンスとAI協力に関する新しい行動計画が公表された。
- 英国AI Security Instituteは、オープンウェイトモデルと最先端クローズドモデルのサイバー能力差が縮小していると報告した。
- 企業実装では、AI台帳、継続監視、Runtime Control、モデル固有リスクの評価がAIガバナンスの中心になりつつある。
なぜ重要か
AIガバナンスの対象は、社内規程や倫理原則だけではありません。どのAIが稼働し、何へアクセスし、どの処理を実行し、問題発生時に停止できるかを継続的に管理することが求められています。
導入
前回の2026年7月13日版では、国連Global Dialogue、IBMのAI Asset Discovery、EU AI Actの主要適用、Agent Runtime Controlへの移行を中心に整理しました。
2026年7月13日以降、今回の調査で確認できた主な更新は以下です。
- 中国が2026 World Artificial Intelligence ConferenceとHigh-Level Meeting on Global AI Governanceを開催
- 中国が国際AI倫理ガバナンスの行動計画と、AI協力・開発に関する行動計画を公表
- 英国AI Security InstituteがオープンウェイトAIモデルのサイバー能力評価を公表
- Google DeepMindが生命科学・生物安全分野のAIリスク管理方針を公表
- NISTが重要インフラ向けTrustworthy AI Profileのプロジェクト情報を更新
- カナダ政府がAI評価結果の報告方法に関する実務的な考慮事項を公開
- 日本では、政府調達・利用向け生成AIガイドラインのAIガバナンス対象範囲が2026年7月1日から適用開始
- Anthropicの独立統治機関Long-Term Benefit Trustに新たな理事が参加
今回の中心テーマは、AI Assurance、AI Sovereignty、Runtime Governanceの接続です。
前回から変更された重要事項
| 分野 | 前回まで | 今回確認した変化 |
|---|---|---|
| 中国 | WAICと国際AIガバナンス会合の開催準備 | 2026年7月17日から20日に開催。AI倫理・国際協力の行動計画を公表 |
| 英国AISI | クラウド設定不備検出事例を公表 | 7月17日、オープンウェイトモデルのサイバー能力が最先端モデルへ接近していると報告 |
| Google DeepMind | AI Agent Control、Multi-Agent Safety | 7月16日、生物安全を対象とする4段階のSafety Processを公表 |
| NIST | 重要インフラ向けAI RMF Profileを開発中 | プロジェクトページが7月17日に更新。策定作業は継続中 |
| カナダ | AI for All国家戦略 | AI評価者が開示すべき情報に関するガイダンスを7月8日に公開 |
| 日本 | 政府向け生成AI調達・利用ガイドラインを改訂 | AI Agentを含むAIガバナンス対象範囲が7月1日から適用 |
| Anthropic | RSP v3.1、Advanced AI Framework | Long-Term Benefit Trustの理事構成を2026年7月に更新 |
| OneTrust | AI Inventory、Runtime Control | 7月28日・30日にRuntime ControlとAgent Governanceを扱う実務講演を予定 |
最新動向の概要
国際機関の動き
OECD
事実
OECDでは、2026年6月に公表されたDigital Government Outlookと、公共機関におけるTrustworthy AIの調査が引き続き最新の主要資料です。
OECD加盟国では、政府におけるAI統治機関の整備が進む一方、データ、インフラ、人材、調達、監督能力には国ごとの差が残っています。
今回の調査期間内に、前回内容を置き換える新たなOECD AIガバナンス枠組みは確認できませんでした。
分析
OECDの動向から読み取れるのは、AI原則の有無よりも、実装能力の差が次の課題になっていることです。
企業でも同様に、AIポリシーの作成だけでなく、次の運用能力が問われます。
- AI資産の特定
- 利用目的の記録
- 責任者の明確化
- リスク評価
- 調達審査
- 利用後の監視
- インシデント対応
UNESCO・国連
事実
国連Global Dialogue on AI Governanceは2026年7月6日から7日にジュネーブで開催され、安全性、説明責任、人間による監督、包摂的なAIガバナンスが議論されました。
UNESCOは、2026年9月14日から17日にサウジアラビア・リヤドでGlobal Forum on the Ethics of AIを開催する予定です。
今回の調査期間内に、企業へ直ちに新しい法的義務を課すUNESCOまたは国連の新制度は確認できませんでした。
分析
国連・UNESCOの役割は、各国規制を直接統一することよりも、次の共通原則を形成することにあります。
- 人権
- 安全性
- 説明責任
- データガバナンス
- AI格差の縮小
- 国際的な評価協力
EUの動き
EU AI Act
事実
EU AI Actの主要部分は2026年8月2日に適用されます。
GPAIモデルに関しては、透明性、著作権、安全性・セキュリティを扱うGPAI Code of Practiceが、事業者による法令順守を支援する任意の手段として位置付けられています。
AI生成コンテンツのマーキングとラベリングについても、透明性義務への適合手段となるCode of Practiceが公表されています。
今回の調査期間内に、2026年8月2日の適用スケジュールを変更する公式発表は確認できませんでした。
分析
企業が直近で確認すべきなのは、EU AI Actの全文を読むことよりも、まず自社の立場を分類することです。
- AIシステム提供者
- AIシステム導入者
- GPAIモデル提供者
- GPAIモデルを組み込むサービス提供者
- EU域外からEU市場へ提供する企業
- AI生成コンテンツを公開する事業者
規制対象性を判断した根拠も、将来の監査証跡になります。
米国の動き
NIST AI RMF
事実
NIST AI RMF 1.0は引き続き改訂作業中であり、AI RMF Playbookは本体改訂後に更新される予定です。
重要インフラ向けの「AI RMF Profile on Trustworthy AI in Critical Infrastructure」は開発中で、プロジェクトページは2026年7月17日に更新されています。
ただし、更新内容から完成版Profileが公表されたとは確認できません。
分析
重要インフラProfileでは、一般的なAI品質だけでなく、以下の観点が重要になると考えられます。
- 可用性
- サイバー攻撃耐性
- フェイルセーフ
- 人間への切り替え
- サプライチェーン
- モデル更新管理
- 障害時の復旧
- 重要機能の継続
完成版を待たず、現行AI RMFのGovern、Map、Measure、Manageを使って準備するのが現実的です。
米国政府全体
事実
今回の調査期間内に、米国政府から企業全般に適用される新たな包括的AI法またはAI規制枠組みの成立は確認できませんでした。
OpenAIやAnthropicによるFrontier AI政策提案、NISTによる技術標準、分野別規制、輸出管理、安全保障政策が引き続き主要な統治手段です。
分析
米国では、単一の包括法よりも、次の複数レイヤーでAI統治が進んでいます。
- 州法
- 連邦機関の調達規則
- セクター別規制
- NIST標準
- 輸出管理
- 国家安全保障
- 企業の自主的Safety Framework
英国の動き
AI Security Institute
事実
英国AI Security Instituteは2026年7月17日、主要なオープンウェイトモデルとクローズドモデルのサイバー能力を比較した評価結果を公表しました。
GLM-5.2とDeepSeek V4-Proは、4~7か月前に公開された最先端クローズドモデルと同程度のサイバー能力を示し、2025年に観測されていた6~10か月の能力差より縮小したと報告しています。
分析
この結果は、オープンウェイトモデルが危険という単純な話ではありません。
重要なのは、高いサイバー能力を持つモデルが、より低コストで広く利用可能になる速度が上がっていることです。
企業は次の前提で防御を見直す必要があります。
- 攻撃者も高性能AIを使用する
- 脆弱性調査が自動化される
- 攻撃コード作成のコストが低下する
- フィッシングや偵察が高度化する
- 防御側もAIによる脆弱性検出を活用する
日本の動き
政府向け生成AIガバナンス
事実
デジタル庁の政府向け生成AI調達・利用ガイドライン改訂版では、生成AIシステムに加えてAI Agentなどの高度なシステムもAIガバナンスの対象とされています。
改訂ガイドライン上の対象範囲は2026年7月1日から適用されています。
AI Agentについて個別の詳細技術要件をすべて規定しているわけではありませんが、各省庁のAIガバナンス体制、リスク事例への対応、高リスクAIの評価対象に含めています。
分析
これは政府向けガイドラインですが、民間企業にも参考になります。
特に有効なのは以下の考え方です。
- 企画段階でリスク分類する
- 高リスク案件を識別する
- 調達時に安全性要件を確認する
- AI利用責任者を定める
- 導入後もモニタリングする
- AI Agentを通常のチャットAIと分けて管理する
AI事業者ガイドライン
事実
AI事業者ガイドラインVer.1.2は2026年3月31日に公表され、生成AI、AI Agent、国際的なAI Safety・Security動向を反映しています。
今回の調査期間内にVer.1.2を置き換える新バージョンは確認できませんでした。
分析
国内企業では、EU AI Actへ直接対応する前に、AI事業者ガイドラインを基礎として次を整備する方法が現実的です。
- AIポリシー
- AI台帳
- リスク評価
- データ管理
- 人間による確認
- AI Agent権限管理
- インシデント対応
韓国の動き
事実
韓国のAI Basic Actは、AI産業振興と信頼基盤を組み合わせた国家的なAI統治枠組みです。
今回の調査期間内に、同法の構造を大幅に変更する新たな公式発表は確認できませんでした。
分析
韓国では、AIガバナンスと産業政策が別々ではなく、同時に進められています。
日本企業が韓国市場でAIサービスを提供する場合は、以下を確認する必要があります。
- 高影響AIへの該当性
- 透明性表示
- 生成AIであることの通知
- 安全性評価
- 現地代理人要件
- 個人情報保護法との関係
シンガポール・ASEANの動き
シンガポール
事実
IMDAのModel AI Governance Framework for Agentic AIは、Agentic AIを導入する組織に対し、以下のような統制を推奨しています。
- リスクを事前に限定する
- 人間の責任を明確にする
- 技術的統制を導入する
- 利用者へ適切に情報提供する
- Agentの行動を継続的に監視する
2026 Singapore Consensus on Global AI Safetyでは、Agentic AI Risk Managementを主要な技術・政策研究分野として扱っています。
今回の調査期間内に、前回のFrameworkを置き換える新文書は確認できませんでした。
分析
シンガポール方式の特徴は、「すべてを人間が常時監視する」という非現実的な設計ではなく、リスクに応じて自動化レベルを分ける点です。
ASEAN
事実
ASEANでは、生成AIを対象とするExpanded ASEAN Guide on AI Governance and Ethicsが引き続き地域共通の実務参考資料です。
今回の調査期間内に、同Guideを置き換える新たな地域共通規則は確認できませんでした。
分析
ASEAN各国では法制度、データ保護、AI政策の成熟度が異なるため、ASEAN Guideだけで全地域への法的適合を判断することはできません。
中国の動き
2026 World AI Conference
事実
2026 World Artificial Intelligence ConferenceとHigh-Level Meeting on Global AI Governanceは、2026年7月17日から20日に上海で開催されました。
約80か国・国際機関の代表が参加し、中国は「人間中心」「AI for Good」「安全かつ制御可能」「国際協力」を主要原則として提示しました。
中国政府は7月17日、国際AI倫理ガバナンスの行動計画を公表しました。国連のGlobal Digital Compactを踏まえ、国際的なAI倫理協力と能力構築を進める内容です。
同時に、データ、計算資源、エコシステム、産業応用、人材、規則・標準、ガバナンス、AI倫理の8分野を対象とするAI協力・開発行動計画も発表されました。
分析
今回の最大の政策更新です。
中国は、国内規制だけでなく、国際AIガバナンスの制度設計へ積極的に関与する姿勢を明確にしています。
ただし、中国が提案する「安全かつ制御可能」という概念が、EUの基本権保護やOECDの民主的価値と完全に同じ意味であるとは限りません。
企業は、共通部分と制度差を分けて理解する必要があります。
UAE・サウジアラビアの動き
サウジアラビア
事実
サウジアラビアは国連Global Dialogue on AI Governanceへ参加し、2026年9月にはリヤドでUNESCO Global Forum on the Ethics of AIを開催する予定です。
今回の調査期間内に、企業へ新たな包括的義務を課すAI法の公式発表は確認できませんでした。
分析
サウジアラビアでは、AI倫理、行政利用、国家データ政策、投資政策が一体として進む傾向があります。
UAE
事実
今回の調査期間内に、UAEの既存AI戦略またはAIガバナンス制度を大幅に変更する新たな公式文書は確認できませんでした。
分析
UAEで事業を行う企業は、AI専用規制だけでなく、以下を確認する必要があります。
- 連邦データ保護法
- フリーゾーンのデータ規制
- 政府調達要件
- クラウド・データ所在地
- 金融・医療等の業界規制
オーストラリアの動き
事実
オーストラリア政府は、2026年7月7日のAI Safety Forumで、Frontier AIに欺瞞、ルール回避、状況認識などの兆候が現れているとのInternational AI Safety Report 2026の知見を紹介しました。
今回の調査期間内に、前回内容を置き換える新たな包括的AI法制の成立は確認できませんでした。
分析
オーストラリアでは、AI専用法だけに依存せず、既存の消費者保護、プライバシー、オンライン安全、競争法とAI Safety Instituteを組み合わせる方向が続いています。
カナダの動き
AI評価の透明性
事実
Canadian Artificial Intelligence Safety Instituteは2026年7月8日、AI評価者が評価結果を公表する際に共有すべき情報について、報告上の考慮事項とベストプラクティスを公開しました。
カナダの国家AI戦略「AI for All」は、安全性、主権、信頼、国内計算資源、中小企業のAI導入を柱としています。
分析
AI評価では、単にスコアを公表するだけでは不十分です。
少なくとも次の情報が必要です。
- 評価対象モデル
- モデルバージョン
- 評価日時
- テスト環境
- 使用したプロンプト
- 評価指標
- 制限事項
- 再現可能性
- 利益相反
- 結果の解釈範囲
国際標準・セキュリティフレームワーク
OWASP LLM Top 10
事実
OWASP Top 10 for LLM Applicationsの現行版は2025版で、Prompt Injection、Sensitive Information Disclosure、Supply Chain、Data and Model Poisoningなどを主要リスクとして扱っています。
今回の調査期間内に、2025版を置き換える新しいLLM Top 10は確認できませんでした。
OWASP Agentic Applications Top 10
事実
Agentic Applications Top 10 for 2026では、以下のリスクが整理されています。
- Agent Goal Hijacking
- Tool Misuse
- Identity and Privilege Abuse
- Agentic Supply Chain Vulnerabilities
- Unexpected Code Execution
- Memory and Context Poisoning
- Insecure Inter-Agent Communication
- Cascading Failures
- Human-Agent Trust Exploitation
- Rogue Agents
分析
LLMセキュリティとAgentセキュリティの違いは、「誤った回答」で終わるか、「誤った処理を実行するか」にあります。
ISO/IEC 42001
事実
ISO/IEC 42001:2023は、AIマネジメントシステムの構築、運用、維持、継続改善を定める国際標準です。
今回の調査期間内に、新版の発行は確認できませんでした。
分析
ISO/IEC 42001認証はAIシステム自体の安全性を自動的に保証するものではありません。
認証対象は、組織の管理体制とプロセスです。
実務では以下を組み合わせます。
- ISO/IEC 42001:AIマネジメント
- ISO/IEC 27001:情報セキュリティ
- ISO/IEC 23894:AIリスク管理
- ISO/IEC 42005:AI Impact Assessment
- NIST AI RMF:Trustworthy AI
- OWASP:LLM・Agentの技術リスク
主要AI企業の動き
OpenAI
事実
今回の調査期間内に、前回確認したFrontier Governanceや政府・国家安全保障利用原則を置き換える新しい包括的ガバナンス文書は確認できませんでした。
分析
OpenAIについては、以下を継続して確認すべきです。
- Frontierモデルの安全性評価
- 政府利用
- 国家安全保障用途
- モデルウェイト保護
- インシデント報告
- 外部評価
- Agent権限管理
Anthropic
事実
AnthropicのResponsible Scaling Policyは2026年7月8日更新のv3.1が現行です。
Anthropicの独立統治機関Long-Term Benefit Trustには、2026年7月に元FRB議長のBen Bernanke氏が参加したことが記載されています。
分析
Long-Term Benefit Trustは、通常の取締役会とは異なり、公共利益をAnthropicの経営判断へ反映させるための独立した統治構造です。
ただし、Trustの存在だけで、モデル安全性や企業行動が自動的に保証されるわけではありません。
Google DeepMind
事実
Google DeepMindは2026年7月16日、生物科学とAIの安全利用を対象とするBioresilience方針を公表しました。
安全管理を次の4段階で説明しています。
- Threat Modeling
- Evaluations
- Mitigations
- Monitoring
分析
この4段階は、生物安全以外の高リスクAIにも応用できます。
特に重要なのは、Mitigationで終わらず、導入後のMonitoringまで含めていることです。
Microsoft
事実
今回の調査期間内に、Agent Governance Toolkitを置き換える新たな包括的製品発表は確認できませんでした。
MicrosoftとIMDAは、Agentic AIの評価方法、ツール、ベンチマークに関する共同研究を継続しています。
分析
Microsoftの方向性は、AgentのRuntime Policy Enforcementを既存のクラウド、ID、アプリケーション基盤へ統合することです。
IBM
事実
IBMは、以下のAIガバナンス機能を2026年7月に公表しています。
- AI Asset Discovery
- Agentic Control Plane
- Use Case Onboarding Optimization
- 継続的なAI Assurance
今回の調査期間内に追加の主要製品発表は確認できませんでした。
分析
IBMの実装は、AIガバナンスの主要課題を以下の順で捉えています。
- AIを発見する
- 利用目的を登録する
- リスクを評価する
- Agentを管理する
- 稼働中も監視する
- 証跡を残す
Palantir
事実
今回の調査期間内に、Palantir AIPのSecurity and Governance文書を置き換える新たな公式更新は確認できませんでした。
分析
Palantirの特徴は、AIへ独立した権限を与えるのではなく、Ontology、既存データ権限、ユーザーID、監査ログへAIを接続する設計です。
xAI
事実
今回の調査期間内に、xAIから新たな包括的AI Safety FrameworkまたはAI Governance Frameworkの公表は確認できませんでした。
分析
xAIについては、Trust Center、プライバシーポリシー、安全性評価、有害コンテンツ対策、政府利用の透明性を継続確認する必要があります。
OneTrust
事実
OneTrustは2026年7月28日に「From AI Risk to Runtime Control」、7月30日にAgent Governance、Policy、Data Governanceを扱う講演を予定しています。
同社はAI Inventoryに加え、Databricks、AWS Bedrock、Microsoft Foundry上のAIをRuntimeで管理する方向を示しています。
分析
AIガバナンス製品市場は、申請フォームとリスク台帳から、以下の領域へ移行しています。
- 自動検出
- リアルタイム監視
- データフロー制御
- Agent権限管理
- Runtime Policy Enforcement
- 証跡の自動生成
今回の重要ポイント
ポイント1:AI国際協力は「共通原則」と「国家主権」の両方を強めている
中国の新しい行動計画、カナダのAI Sovereignty、EU AI Act、米国の輸出管理は、一見すると異なる方向に見えます。
しかし共通しているのは、AIを国家の経済、安全保障、データ、文化に関わる基盤と捉えている点です。
ポイント2:オープンウェイトモデルの能力差が縮小している
高性能モデルが広く入手可能になると、技術革新は促進されます。
一方で、以下のリスク管理が必要になります。
- モデル配布先
- 利用条件
- 重みファイルの保護
- Fine-tuning後の安全性
- サイバー能力評価
- 悪用監視
- インシデント共有
ポイント3:AI Assuranceは「導入後の監視」を含む
評価報告書や導入時審査だけでは、AIの継続的な安全性を保証できません。
モデル更新、データ変更、Tool追加、権限変更、利用者変更のたびにリスクが変化するためです。
実務への影響
企業が確認すべきこと
- 使用中のAIとAI Agentをすべて把握しているか
- オープンウェイトモデルを社内で運用しているか
- AIが使用するIDと権限を把握しているか
- モデル更新後に再評価しているか
- Tool Callを記録しているか
- AIが外部へ送信するデータを制御しているか
- EU AI Actの対象性を判定しているか
- 緊急停止方法をテストしているか
個人事業主が確認すべきこと
- 顧客情報を個人向けAIへ入力していないか
- AI利用が契約で禁止されていないか
- AI生成物を確認せず納品していないか
- 接続済みクラウドサービスを把握しているか
- AIサービス停止時の代替手段があるか
AIを業務利用する現場が確認すべきこと
- AIへ入力してよい情報を理解しているか
- 外部PDFやWebページのPrompt Injectionを想定しているか
- AI Agentに削除・公開・送信・決済権限を与えていないか
- 異常な出力や処理を報告できるか
- AIの回答と人間の承認を区別して記録しているか
リスク整理
| リスク | 内容 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 情報漏洩 | プロンプト、RAG、Agentメモリ、外部通信から情報が流出する | DLP、入力制限、送信先制御を導入する |
| 誤回答 | AIが誤った内容を自然な文章で出力する | 重要処理では根拠確認と人間承認を必須にする |
| プロンプトインジェクション | 外部データから不正命令を読み込む | 命令と参照データを分離する |
| 権限管理不備 | Agentが必要以上のシステムへアクセスする | 専用ID、最小権限、短期認証を使う |
| ログ不足 | AIの判断・実行経路を追跡できない | Input、Output、Tool Call、承認を保存する |
| モデル更新リスク | 更新後に性能、安全性、動作が変わる | バージョン固定と再評価を行う |
| オープンモデル悪用 | 高性能モデルを制限なく改変・利用できる | 配布、保管、Fine-tuning、API公開を管理する |
| 著作権・個人情報 | 入力・生成物に第三者権利が含まれる | 利用目的、同意、出典、規約を確認する |
今日からできる対策
1. AI利用台帳を更新する
チャットAIだけでなく、AI搭載SaaS、ローカルモデル、RAG、AI Agentも登録します。
2. AI Agent専用IDを作る
人間の管理者IDや共有IDでAgentを動かさないようにします。
3. モデルバージョンを記録する
評価結果と使用モデルを対応付けます。
4. Tool Callを記録する
何を読み、何を更新し、どこへ送信したかを追跡できるようにします。
5. 停止手順をテストする
Kill Switchが存在するだけでなく、実際に機能するかを確認します。
6. 月次レビューを行う
利用中AI、規約、モデル更新、権限、インシデントを月1回確認します。
今後の注目ポイント
今後30日以内
- 2026年8月2日のEU AI Act主要適用
- GPAI提供者へのEuropean Commissionの執行体制
- OneTrustのRuntime Control実装
- Google DeepMindのBioresilience評価手法
- 中国のAI国際協力行動計画への各国反応
- NIST重要インフラProfileの進捗
- OWASP Agentic Security関連資料の追加更新
今後3か月
- UNESCO Global Forum on the Ethics of AI
- NIST AI RMF改訂版
- EU AI Actの初期執行事例
- AI Safety Institute間の評価情報共有
- オープンウェイトモデルの能力差
- AI AgentのID・権限管理標準
- ISO/IEC 42001導入・認証事例
まとめ
今回の最大の更新は、中国が国際AI倫理ガバナンスとAI協力に関する行動計画を公表したことです。
同時に、英国AISIの評価は、高性能AIのサイバー能力がより広く利用可能になっていることを示しています。
企業が取るべき対応は、AIを禁止することではありません。
必要なのは、次の状態を作ることです。
- どのAIが存在するか分かる
- 誰が責任者か分かる
- 何へアクセスできるか分かる
- 何を実行したか追跡できる
- 問題発生時に停止できる
- モデル更新後に再評価できる
AIガバナンスは、書類を完成させる活動ではなく、AIを安全に使い続けるための運用です。
参照URL
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https://www.oecd.org/en/publications/oecd-survey-on-drivers-of-trust-in-public-institutions-2026-results_9eb63fec-en/full-report/trustworthy-artificial-intelligence-in-the-public-sector_6f98c91a.html
https://www.unesco.org/en/articles/un-global-dialogue-opens-urgent-call-safe-and-inclusive-ai-benefits-all
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https://www.unesco.org/en/forum-ethics-ai
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