ソーシャルエンジニアリング対策とヒューマンファイアウォール教育:【第6話】これからのソーシャルエンジニアリング対策とヒューマンファイアウォールの未来

投稿日:2025年3月18日 | 最終更新日:2025年3月18日

■ はじめに

全6話にわたってソーシャルエンジニアリング攻撃の特徴やヒューマンファイアウォールの重要性、実践的な教育プログラムの組み方などを紹介してきました。最終回の第6話では、今後のソーシャルエンジニアリングの動向や、テクノロジー&法制度の観点からの支援策、そしてヒューマンファイアウォールの未来展望をまとめていきます。


■ ソーシャルエンジニアリングの今後のトレンド

  1. AIを活用した攻撃の高度化
    • 攻撃者がAI技術を使い、大量のSNSデータやメール文面を解析して、より精巧なフィッシングメール・SNSメッセージを作成する流れがすでに進行中。
    • Deepfake音声や動画を使い、CEOや上司の“声”や“姿”になりすました詐欺も懸念されている。
  2. ビジネスプロセスへの深い介入
    • 企業の業務フローを詳細に把握し、本物そっくりの請求書や発注書を作成するなど、BEC詐欺がさらに精密化。
    • リモートワークやクラウドの普及により、攻撃者のターゲット範囲が拡大している。
  3. モバイルデバイスを狙ったソーシャルエンジニアリング
    • SMSやチャットアプリでの「スミッシング(Smishing)」や「ボイスフィッシング(Vishing)」が増加。
    • スマホユーザーのセキュリティ意識はPCよりも低いケースがあり、狙われやすい。

■ テクノロジーや法制度からの対策支援

  1. 生体認証・多要素認証の普及
    • パスワード依存を減らし、顔認証・指紋認証・ワンタイムパスコードなどを組み合わせることで、詐欺や乗っ取りのリスクを軽減。
    • ID管理システムやゼロトラストソリューションとの連携が進むことで、ユーザーの負担を抑えながらセキュリティを高められる。
  2. AIによるリアルタイム検知
    • セキュリティベンダーがAIモデルを開発し、不審メールやチャット、SNS投稿をリアルタイムにスキャン
    • 不審な文言や行動パターンを自動的に警告・ブロックする仕組みが拡大している。
  3. 法整備・企業責任の明確化
    • 一部の国や地域では、フィッシング詐欺に対する企業の責任やユーザー救済手段を法律で定める動きがある。
    • 個人情報保護法やGDPRなどの規制強化により、情報漏えいへのペナルティが大きくなり、企業がセキュリティ対策に投資するインセンティブが働いている。

■ ヒューマンファイアウォールの未来

  1. テクノロジーとのハイブリッド防御
    • ヒューマンファイアウォールとAI搭載のセキュリティソリューションが連携し、人間の直感機械の高速処理の両面で攻撃を見極める時代へ。
    • たとえば、社員が「怪しい」と感じたメールをボタン一つでセキュリティシステムに通報すると、組織全体でブロック・分析が即座に行われるようになる。
  2. 教育だけでなく“習慣化”へ
    • 一度の研修や訓練で満足するのではなく、日常的にセキュリティ意識を高め続ける施策(ゲーミフィケーション、ミニクイズなど)が主流となる。
    • 新入社員だけでなく、全社員を対象にした定期的アップデート研修が当たり前のカルチャーに。
  3. グローバル連携と情報共有
    • サイバー攻撃は国境を超えて行われるため、各国のCSIRTやISAC(Information Sharing and Analysis Center)との協力体制が重要に。
    • ソーシャルエンジニアリングの新手口が発見されたら、即座に世界中の企業が知識を共有し、対策を練る仕組みがさらに強化される見込み。

■ まとめ

ソーシャルエンジニアリングは、今後もAIなどの新技術を取り込みつつ高度化・多様化していくと考えられます。その中で、組織の最後の砦となるのはやはり「人間」の意識と行動です。テクノロジーと教育の両面を組み合わせたヒューマンファイアウォールこそ、これからの攻撃対策における最重要要素と言えます。
本連載全6話が、皆さまのセキュリティ教育や啓発活動の一助になれば幸いです。ソーシャルエンジニアリング対策のゴールはありませんが、継続的な取り組みが攻撃を未然に防ぐ大きな力となります。ぜひ社内外で情報を共有し、強固なセキュリティ文化を築いていきましょう。


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