「社会人としてのセキュリティリテラシーを高める方法」(第7回/全8回)

7.社内ネットワークとデータ管理のセキュリティ:情報漏洩の防止と対応

こんにちは。前回は、モバイルデバイスのセキュリティについて解説しました。今回は、社内ネットワークとデータ管理のセキュリティを取り上げます。

企業にとって、情報は重要な資産です。顧客情報や営業秘密、財務データなど、機密性の高い情報が多数存在します。これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の信用失墜や損害賠償請求などの深刻な事態につながりかねません。

  • 企業の約70%が、過去3年間で情報漏洩インシデントを経験している(JNSA調査)
  • 情報漏洩による平均損害額は、1件あたり約1億3,000万円に上る(NPO日本ネットワークセキュリティ協会調べ)
  • 情報漏洩の原因の約80%は、内部要因(従業員のミスや不正行為)である(IPA調査)

社内ネットワークとデータ管理のセキュリティ対策は、情報漏洩を防ぐために欠かせません。技術的対策と人的対策の両面から、体系的にアプローチすることが求められます。

■社内ネットワークのセキュリティ対策

社内ネットワークのセキュリティを高めるためには、以下のような対策が有効です。

ファイアウォールの設置

社内ネットワークと外部ネットワークの境界にファイアウォールを設置し、不正アクセスを防ぎます。外部からのアクセスは原則として遮断し、必要な通信のみを許可するように設定します。

VPNの利用

社外からのアクセスが必要な場合は、VPNを利用して通信を暗号化します。IPsecやSSLなどの技術を用いることで、安全にリモートアクセスができます。

ネットワーク分離

社内ネットワークを、業務用と来訪者用など、用途に応じて分離することが望ましいです。重要な情報を扱うネットワークは、他のネットワークから物理的に分離することで、セキュリティを高められます。

脆弱性管理

社内ネットワークに接続される機器やソフトウェアの脆弱性を定期的にチェックし、修正することが大切です。脆弱性スキャンツールを活用し、必要なパッチを適用するプロセスを確立しましょう。

ログ管理

社内ネットワークの通信ログを記録し、定期的に分析することが重要です。不審な通信がないかチェックし、セキュリティインシデントの兆候を早期に発見できるようにします。

これらの対策を組み合わせることで、社内ネットワークの堅牢性を高めることができます。ただし、技術的対策だけでは限界があるので、従業員の意識向上も欠かせません。

■データ管理のセキュリティ対策

企業の情報資産を守るためには、データ管理のセキュリティ対策も重要です。以下のような施策が効果的です。

アクセス制御

重要なデータへのアクセスは、必要最小限の従業員に限定することが基本です。アクセス権限の設定は、職務に応じて適切に行い、定期的に見直しを実施します。

暗号化

機密性の高いデータは、暗号化することが望ましいです。ファイルやフォルダ単位で暗号化できるツールを活用し、情報漏洩のリスクを低減しましょう。

バックアップ

データのバックアップは、定期的に取得することが大切です。ランサムウェア被害などに備え、バックアップデータは物理的に分離された場所に保管するのが理想的です。

モバイルデバイスの管理

モバイルデバイスに企業データを保存する場合は、セキュリティ対策が欠かせません。前回解説したようなMDMツールを活用し、一元的に管理することが効果的です。

情報の分類

企業内の情報を、機密性のレベルに応じて分類することが重要です。情報の重要度に基づいて、適切な管理方法を定めることができます。

データ管理のセキュリティは、従業員一人ひとりの意識と行動に大きく左右されます。機密情報の取り扱いに関する教育を徹底し、情報漏洩を防ぐ風土を醸成することが求められます。

■情報漏洩発生時の対応

万が一、情報漏洩が発生した場合は、迅速かつ適切な対応が求められます。以下のようなプロセスが重要です。

事実確認

情報漏洩の事実を速やかに確認し、漏洩した情報の内容や範囲、経緯などを特定します。証拠の保全にも留意しましょう。

報告・連絡

情報漏洩の事実を、社内の関係部署や経営層に報告します。監督官庁への報告も必要に応じて行います。

被害拡大の防止

情報漏洩の原因を特定し、二次被害の防止に努めます。システムの停止やネットワークの遮断など、必要な措置を講じましょう。

影響調査

情報漏洩による影響を調査し、対象者に説明と謝罪を行います。必要に応じて、補償などの措置も検討します。

再発防止策の実施

情報漏洩の原因を分析し、再発防止策を策定します。技術的対策と人的対策を組み合わせ、体系的に実施することが大切です。

情報漏洩発生時は、速やかに対応することが何より重要です。平時から緊急時の対応手順を定め、定期的に訓練を行っておくことが欠かせません。

■まとめ

社内ネットワークとデータ管理のセキュリティは、企業経営に直結する重要な課題です。情報漏洩による被害は、金銭的損失だけでなく、信用の失墜という取り返しのつかない事態を招きます。

  • 社内ネットワークは、ファイアウォールやVPN、ネットワーク分離などの対策を講じる
  • データ管理では、アクセス制御や暗号化、バックアップなどの施策が欠かせない
  • 情報漏洩発生時は、迅速かつ適切な対応が求められる

社内ネットワークとデータ管理のセキュリティ対策は、企業の規模や業種によって異なります。自社の状況に合わせて、効果的な対策を選択し、継続的に改善していくことが何より大切です。

次回は、「セキュリティ意識を高めるための自己啓発と組織文化の醸成」を取り上げ、連載の最終回とします。お楽しみに!

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