2.パスワード管理の基本:強力なパスワードの作り方とパスワードマネージャーの活用
こんにちは。前回は、セキュリティリテラシーの重要性について解説しました。今回は、セキュリティ対策の基本中の基本である「パスワード管理」について取り上げます。
パスワードは、私たちのデジタルライフを守る最初の砦です。しかし、その重要性は軽視されがちです。
- 日本人の約4割が、複数のサービスで同一のパスワードを使い回している(総務省調査)
- 推測されやすい「password」「123456」などの弱いパスワードが、未だに上位を占める(NCCグループ調査)
- パスワードの使い回しが原因で、複数のアカウントが不正アクセスを受けるリスクがある
こうした現状を踏まえ、今回は強力なパスワードの作り方とパスワードマネージャーの活用方法を解説します。
■強力なパスワードの作り方
強力なパスワードを作るためには、以下の4つのポイントを押さえましょう。
長さは12文字以上
パスワードは長ければ長いほど強度が増します。最低でも12文字以上の長さが推奨されます。8文字のパスワードは、現在のコンピューターの処理能力であれば、数時間から数日でクラックされる可能性があります。一方、12文字以上のパスワードは、クラックに数十年以上かかると言われています。
大文字、小文字、数字、記号を組み合わせる
アルファベットの大文字・小文字、数字、記号を組み合わせることで、パスワードの推測が難しくなります。例えば、「password」という弱いパスワードも、「Pa$$w0rD」のように変化させるだけで、強度が大幅に増します。ただし、「Pa$$w0rD」のようなよくあるパターンは避け、ランダムな組み合わせを使うことが大切です。
辞書に載っている単語は避ける
辞書に載っている単語や、名前、誕生日など、個人情報に関連する言葉は避けましょう。これらは推測されやすいパスワードです。また、映画のタイトルやアーティスト名など、一般的な単語も避けた方が無難です。パスワードクラッキングツールには、辞書攻撃と呼ばれる手法があり、一般的な単語の組み合わせを高速で試すことができます。
サービスごとに異なるパスワードを使う
同じパスワードを複数のサービスで使い回すことは、セキュリティ上のリスクになります。あるサービスでパスワードが漏洩すると、他のサービスでも不正アクセスを受ける可能性があるからです。サービスごとに異なるパスワードを設定することが重要です。
例えば、「Tky_20230410_$tR0nG」のように、大文字・小文字・数字・記号を組み合わせ、個人情報とは関連性のないパスワードを作成します。パスワードに意味のある言葉を入れると覚えやすくなりますが、その分推測もされやすくなります。ランダムな文字列が最も安全です。
■パスワード管理の落とし穴
強力なパスワードを作成しても、以下のような落とし穴に注意が必要です。
パスワードを紙に書いて保管する
パスワードを紙に書いて保管することは、セキュリティ上のリスクになります。紙に書いたパスワードを他人に見られたり、紛失したりする可能性があるからです。また、紙に書いたパスワードは、定期的に更新することも忘れがちです。
パスワードを共有する
家族や同僚とパスワードを共有することは避けましょう。パスワードを知っている人が増えるほど、漏洩のリスクは高まります。どうしても共有する必要がある場合は、パスワード管理ツールの共有機能を使うなど、セキュリティに配慮した方法を選びましょう。
ブラウザにパスワードを保存する
ブラウザにパスワードを保存することは便利ですが、セキュリティ上のリスクもあります。パソコンを他人に使われた場合、保存されたパスワードから不正アクセスを受ける可能性があるからです。特に、共用のパソコンでは、ブラウザへのパスワード保存は避けましょう。
■パスワードマネージャーの活用
サービスごとに異なるパスワードを設定することは重要ですが、すべてを記憶するのは大変です。そこで活用したいのが、パスワードマネージャーです。
パスワードマネージャーは、複数のパスワードを一括管理してくれるツールです。マスターパスワードを設定すれば、他のパスワードは自動生成・入力してくれます。パスワードマネージャーには、以下のようなメリットがあります。
強力なパスワードを簡単に管理できる
パスワードマネージャーを使えば、長くて複雑なパスワードを簡単に管理できます。パスワードの自動生成機能を使えば、サービスごとに異なる強力なパスワードを設定できます。
パスワードの入力が楽になる
パスワードマネージャーには、Webサイトやアプリへのログイン時に、パスワードを自動入力してくれる機能があります。毎回手動でパスワードを入力する手間が省け、利便性が高まります。
パスワードの定期的な変更が容易になる
パスワードは定期的に変更することが望ましいですが、手動で変更するのは大変です。パスワードマネージャーの中には、パスワードの自動変更機能を備えたものもあります。定期的にパスワードを変更する習慣をつけやすくなります。
おすすめのパスワードマネージャーには、次のようなものがあります。
LastPass(ラストパス)
クラウド同期機能やパスワード自動変更機能を備えた、人気のパスワードマネージャーです。無料プランでも十分な機能を利用できます。有料プランでは、パスワード以外の個人情報も管理できます。
1Password(ワンパスワード)
シンプルな操作性と高いセキュリティ性能が特徴です。家族や企業向けのプランもあり、幅広いニーズに対応しています。マスターパスワードの代わりに、指紋認証や顔認証を使える点も便利です。
Dashlane(ダッシュレーン)
VPN機能やダークウェブ監視機能など、セキュリティ機能が充実しています。ユーザーインターフェースも使いやすく、初心者におすすめです。プレミアムプランでは、1GBのクラウドストレージも利用できます。
パスワードマネージャーを活用することで、強力なパスワードを簡単に管理できます。ただし、マスターパスワードは十分に強力なものを設定し、他人に知られないよう管理することが大切です。また、パスワードマネージャーを利用する端末のセキュリティにも気を付けましょう。
■二要素認証の設定
強力なパスワードを設定しても、万が一パスワードが漏洩してしまうリスクはゼロではありません。そこで、パスワードに加えてもう一段階の認証を行う「二要素認証」の設定がおすすめです。
二要素認証では、パスワードに加えて、以下のような別の認証方法を組み合わせます。
- SMSで送られる確認コード
- 専用アプリで生成されるワンタイムパスワード
- 指紋や顔認証などの生体認証
- USBキーなどのハードウェアトークン
二要素認証を設定すれば、たとえパスワードが漏洩しても、不正アクセスを防ぐことができます。サービスへのログイン時に、パスワードに加えて二段階目の認証が求められるからです。
Gmail、Facebookなど、主要なWebサービスの多くが二要素認証に対応しています。設定方法は各サービスのヘルプページを参照してください。二要素認証の設定は少し手間がかかりますが、セキュリティを大幅に高められるメリットは大きいです。
■まとめ
パスワード管理は、セキュリティ対策の基本です。強力なパスワードの作成、パスワードマネージャーの活用、二要素認証の設定を通じて、日頃からセキュリティ意識を高めていきましょう。
- 長さ12文字以上、大文字・小文字・数字・記号を組み合わせたパスワードを作る
- サービスごとに異なるパスワードを設定し、使い回しは避ける
- パスワードマネージャーを活用し、強力なパスワードを簡単に管理する
- 二要素認証を設定し、パスワード漏洩のリスクに備える
セキュリティ対策は一朝一夕で完璧にはなりません。日々の小さな積み重ねが大切です。パスワード管理を見直すことから始めてみましょう。
次回は、「フィッシング詐欺の手口と対策:怪しいメールやWebサイトの見分け方」を取り上げます。お楽しみに!