「社会人としてのセキュリティリテラシーを高める方法」(第2回/全8回)

投稿日:2024年5月10日 | 最終更新日:2024年5月14日

2.パスワード管理の基本:強力なパスワードの作り方とパスワードマネージャーの活用

こんにちは。前回は、セキュリティリテラシーの重要性について解説しました。今回は、セキュリティ対策の基本中の基本である「パスワード管理」について取り上げます。

パスワードは、私たちのデジタルライフを守る最初の砦です。しかし、その重要性は軽視されがちです。

  • 日本人の約4割が、複数のサービスで同一のパスワードを使い回している(総務省調査)
  • 推測されやすい「password」「123456」などの弱いパスワードが、未だに上位を占める(NCCグループ調査)
  • パスワードの使い回しが原因で、複数のアカウントが不正アクセスを受けるリスクがある

こうした現状を踏まえ、今回は強力なパスワードの作り方とパスワードマネージャーの活用方法を解説します。

■強力なパスワードの作り方

強力なパスワードを作るためには、以下の4つのポイントを押さえましょう。

長さは12文字以上

パスワードは長ければ長いほど強度が増します。最低でも12文字以上の長さが推奨されます。8文字のパスワードは、現在のコンピューターの処理能力であれば、数時間から数日でクラックされる可能性があります。一方、12文字以上のパスワードは、クラックに数十年以上かかると言われています。

大文字、小文字、数字、記号を組み合わせる

アルファベットの大文字・小文字、数字、記号を組み合わせることで、パスワードの推測が難しくなります。例えば、「password」という弱いパスワードも、「Pa$$w0rD」のように変化させるだけで、強度が大幅に増します。ただし、「Pa$$w0rD」のようなよくあるパターンは避け、ランダムな組み合わせを使うことが大切です。

辞書に載っている単語は避ける

辞書に載っている単語や、名前、誕生日など、個人情報に関連する言葉は避けましょう。これらは推測されやすいパスワードです。また、映画のタイトルやアーティスト名など、一般的な単語も避けた方が無難です。パスワードクラッキングツールには、辞書攻撃と呼ばれる手法があり、一般的な単語の組み合わせを高速で試すことができます。

サービスごとに異なるパスワードを使う

同じパスワードを複数のサービスで使い回すことは、セキュリティ上のリスクになります。あるサービスでパスワードが漏洩すると、他のサービスでも不正アクセスを受ける可能性があるからです。サービスごとに異なるパスワードを設定することが重要です。

例えば、「Tky_20230410_$tR0nG」のように、大文字・小文字・数字・記号を組み合わせ、個人情報とは関連性のないパスワードを作成します。パスワードに意味のある言葉を入れると覚えやすくなりますが、その分推測もされやすくなります。ランダムな文字列が最も安全です。

■パスワード管理の落とし穴

強力なパスワードを作成しても、以下のような落とし穴に注意が必要です。

パスワードを紙に書いて保管する

パスワードを紙に書いて保管することは、セキュリティ上のリスクになります。紙に書いたパスワードを他人に見られたり、紛失したりする可能性があるからです。また、紙に書いたパスワードは、定期的に更新することも忘れがちです。

パスワードを共有する

家族や同僚とパスワードを共有することは避けましょう。パスワードを知っている人が増えるほど、漏洩のリスクは高まります。どうしても共有する必要がある場合は、パスワード管理ツールの共有機能を使うなど、セキュリティに配慮した方法を選びましょう。

ブラウザにパスワードを保存する

ブラウザにパスワードを保存することは便利ですが、セキュリティ上のリスクもあります。パソコンを他人に使われた場合、保存されたパスワードから不正アクセスを受ける可能性があるからです。特に、共用のパソコンでは、ブラウザへのパスワード保存は避けましょう。

■パスワードマネージャーの活用

サービスごとに異なるパスワードを設定することは重要ですが、すべてを記憶するのは大変です。そこで活用したいのが、パスワードマネージャーです。

パスワードマネージャーは、複数のパスワードを一括管理してくれるツールです。マスターパスワードを設定すれば、他のパスワードは自動生成・入力してくれます。パスワードマネージャーには、以下のようなメリットがあります。

強力なパスワードを簡単に管理できる

パスワードマネージャーを使えば、長くて複雑なパスワードを簡単に管理できます。パスワードの自動生成機能を使えば、サービスごとに異なる強力なパスワードを設定できます。

パスワードの入力が楽になる

パスワードマネージャーには、Webサイトやアプリへのログイン時に、パスワードを自動入力してくれる機能があります。毎回手動でパスワードを入力する手間が省け、利便性が高まります。

パスワードの定期的な変更が容易になる

パスワードは定期的に変更することが望ましいですが、手動で変更するのは大変です。パスワードマネージャーの中には、パスワードの自動変更機能を備えたものもあります。定期的にパスワードを変更する習慣をつけやすくなります。

おすすめのパスワードマネージャーには、次のようなものがあります。

LastPass(ラストパス)

クラウド同期機能やパスワード自動変更機能を備えた、人気のパスワードマネージャーです。無料プランでも十分な機能を利用できます。有料プランでは、パスワード以外の個人情報も管理できます。

1Password(ワンパスワード)

シンプルな操作性と高いセキュリティ性能が特徴です。家族や企業向けのプランもあり、幅広いニーズに対応しています。マスターパスワードの代わりに、指紋認証や顔認証を使える点も便利です。

Dashlane(ダッシュレーン)

VPN機能やダークウェブ監視機能など、セキュリティ機能が充実しています。ユーザーインターフェースも使いやすく、初心者におすすめです。プレミアムプランでは、1GBのクラウドストレージも利用できます。

パスワードマネージャーを活用することで、強力なパスワードを簡単に管理できます。ただし、マスターパスワードは十分に強力なものを設定し、他人に知られないよう管理することが大切です。また、パスワードマネージャーを利用する端末のセキュリティにも気を付けましょう。

■二要素認証の設定

強力なパスワードを設定しても、万が一パスワードが漏洩してしまうリスクはゼロではありません。そこで、パスワードに加えてもう一段階の認証を行う「二要素認証」の設定がおすすめです。

二要素認証では、パスワードに加えて、以下のような別の認証方法を組み合わせます。

  • SMSで送られる確認コード
  • 専用アプリで生成されるワンタイムパスワード
  • 指紋や顔認証などの生体認証
  • USBキーなどのハードウェアトークン

二要素認証を設定すれば、たとえパスワードが漏洩しても、不正アクセスを防ぐことができます。サービスへのログイン時に、パスワードに加えて二段階目の認証が求められるからです。

Gmail、Facebookなど、主要なWebサービスの多くが二要素認証に対応しています。設定方法は各サービスのヘルプページを参照してください。二要素認証の設定は少し手間がかかりますが、セキュリティを大幅に高められるメリットは大きいです。

■まとめ

パスワード管理は、セキュリティ対策の基本です。強力なパスワードの作成、パスワードマネージャーの活用、二要素認証の設定を通じて、日頃からセキュリティ意識を高めていきましょう。

  • 長さ12文字以上、大文字・小文字・数字・記号を組み合わせたパスワードを作る
  • サービスごとに異なるパスワードを設定し、使い回しは避ける
  • パスワードマネージャーを活用し、強力なパスワードを簡単に管理する
  • 二要素認証を設定し、パスワード漏洩のリスクに備える

セキュリティ対策は一朝一夕で完璧にはなりません。日々の小さな積み重ねが大切です。パスワード管理を見直すことから始めてみましょう。

次回は、「フィッシング詐欺の手口と対策:怪しいメールやWebサイトの見分け方」を取り上げます。お楽しみに!

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