WEF年次総会2026:2025から「増えたテーマ/消えたテーマ」を公式情報で照合

毎年のダボスは、同じ言葉を繰り返しているようで、実は切り口が少しずつズレる。2026年の看板は「対話の力」。その裏側には、同盟も規範も揺れる“争点化した世界”という前提が透ける。2025と比較して、議題の主語がどこへ移ったのかを整理する。

https://www.weforum.org/stories/2025/10/davos-2026-convenes-under-the-theme-a-spirit-of-dialogue


まず前提:2025と2026で「全体テーマ」と「5本柱」が変わった

2025年は全体テーマが “Collaboration for the Intelligent Age” で、議論の焦点は「成長」「産業」「人」「地球」「信頼」の5領域に整理されている。

https://www.weforum.org/press/2025/01/a-call-for-collaboration-in-the-intelligent-age-world-economic-forum-annual-meeting-2025

2026年は全体テーマが “A Spirit of Dialogue(対話の力)” で、プログラムは「争点化した世界での協力」から始まる5つの主要課題に再編されている。

https://www.weforum.org/stories/2025/10/davos-2026-convenes-under-the-theme-a-spirit-of-dialogue

(日本語版の概要)https://jp.weforum.org/stories/2025/11/davos-2026-convenes-under-the-theme-a-spirit-of-dialogue-ja/ 


結論:2026で「新たに前面化」したこと/「柱としては消えた」こと

2026で新たに前面化した“独立テーマ”

2026は、5本柱の筆頭に 「対立が深まる世界における協力(cooperation in a contested world)」 を置いた。2025にも地政学や分断の文脈はあったが、2026は「対立がある状態でも協力を回す」ことが、最上位の問いとして独立した形だ。

https://www.weforum.org/stories/2025/10/davos-2026-convenes-under-the-theme-a-spirit-of-dialogue

(2026公式ミーティングページ日本語)https://jp.weforum.org/meetings/world-economic-forum-annual-meeting-2026/ 

2025から“柱としては”消えた(ただし中身は吸収された)もの

2025の5本柱のひとつ 「Rebuilding Trust(信頼の再構築)」 は、2026の5本柱の名称としては出てこない。代わりに2026は、会合テーマ自体を「対話の力」とし、信頼を“柱”ではなく“前提条件(対話と協力を成立させる土台)”へ回り込ませた配置に見える。

https://www.weforum.org/press/2025/01/a-call-for-collaboration-in-the-intelligent-age-world-economic-forum-annual-meeting-2025

https://www.weforum.org/stories/2025/10/davos-2026-convenes-under-the-theme-a-spirit-of-dialogue


5本柱の「対応関係」を、人間の体感に落として読む

1) 「信頼」→「争点化した世界での協力」へ(主語が変わった)

2025は“信頼を取り戻す”が柱だった。2026は“信頼がない前提でも協力が回るか”が柱になった。これは、理想論のスローガンから、合意形成・ルール・実装の「設計論」へ議論が寄った、という変化でもある。

2) 「産業の変容」→「責任あるイノベーションの大規模展開」へ(“作る”より“導入する”の責任)

2025の柱には 「Industries in the Intelligent Age」 がある。2026はこの看板が前に出ず、代わりに 「イノベーションを大規模に展開しつつ責任を担保する」 が柱になる。産業構造の話より、AIなどを社会へ入れる時の統治・責任・副作用の扱いが前に来た、と読める。

3) 「地球を守る」→「境界の範囲で繁栄する」へ(守るから、回すへ)

2025は Safeguarding the Planet(地球を守る)。2026は planetary boundaries(プラネタリー・バウンダリー) の“境界内で繁栄する”が柱になる。環境を「守る対象」から「経済設計の制約条件」へ置き換え、循環・再生・自然資本まで含めて“回る形”を問うニュアンスが強い。

4) 「成長の再構築」→「新たな成長源の開拓」へ(成長を“どう作り直すか”より“どこから出すか”)

2025は Reimagining Growth。2026は unlocking new sources of growth。言い回しの差は小さく見えるが、体感としては「成長モデルの議論」から「成長ドライバー(源泉)の発掘」へ寄っている。つまり、制度・技術・人材・投資が噛み合う“成長の出所”を探す方向。

5) 「人材投資」は継続(ただし、重みが増している)

2025も2026も Investing in People(人への投資) が柱として残る。対立・技術実装・環境制約が同時に進むほど、スキル・雇用・生活の土台が崩れやすい。だからここは“毎年あるテーマ”でありながら、毎年少しずつ現実味が増していく領域でもある。


2026の空気を補足する「今年の単語」(テーマ差分を“手触り”にする)

Davos 2026に向けて、WEF公式が「会場で飛び交いそうな用語」をまとめている。ここに出てくる語は、2026の議論が“理想”より“現実の摩擦”へ寄っていることを示す補助線になる(例:minilateralism、resilience economics など)。

https://www.weforum.org/stories/2025/12/some-phrases-you-might-hear-at-davos-wef-2026


まとめ:「テーマが変わった」のではなく、「言葉の置き場所が変わった」

2026から「信頼」が消えたように見えるのは、信頼が不要になったからではない。むしろ逆で、信頼は“柱”として掲げる段階から、対話と協力を成立させる“前提”として全体に溶け込む段階へ移った。だから2026は、理想の合言葉よりも、対立がある状態でどう回すか――設計の議論が増える。

https://www.weforum.org/stories/2025/10/davos-2026-convenes-under-the-theme-a-spirit-of-dialogue


参照URL(公式)